「撃てるものなら、撃ってみろ」
と、城をめざして逃走を続ける。城内に入られてしまえば万事休す。
ここで政宗は非情の射撃を命じる。一説によれば、輝宗が「撃て」と叫んだといわれるが、言われたままに父を撃てるヤツはそういない。一斉射撃で義継主従は撃ち殺されるが、輝宗も無事で済むはずがなく絶命。享年42。
政宗は父の亡骸にすがって涙したというが、撃てと命じたのは自分である。
「ブチ殺す!」
政宗の怒りは、事の発端をつくった義継に向けられた。倍返ししようにも義継はすでに血まみれで絶命しているのだが、激高した政宗にはもはや生者も死者も関係ない。抜刀して義継の死骸を滅茶苦茶に切り刻み、バラバラの肉片にしてしまう。
政宗はさらに家臣に命じて、義継のバラバラ死体を付近にあった藤ヅルでつなぎ合わせた。適当につなぎ合わせた死骸は、手足が逆になっていたり、肉片がぶらぶら垂れ下がったりしており、凄惨な状態だった。にもかかわらず、怒りが冷めやらぬ政宗によって、さらに目はくり抜かれ、鼻や耳が削がれたといわれる。
この後、義継の死骸は二本松城の門前に晒された。変わり果てた主君の姿を見て、
「政宗にちょっかいをだしたら、必ずタマを獲られる」
あの世に逃げようとも、政宗は絶対に逃しはしない。ボロ雑巾のようになった義継の死骸を見せつけられて、城兵たちもその執拗さを思い知らされた。