このペニーの投球は『室内練習』でしか見られなかったが、心地好いミット音を響かせていた。先発枠に入ってくるのは間違いない。
ペニーの印象を伝えると、『直球の重量感』よりも、『カーブ系の変化球』の方が脅威に思えた。曲がり具合、軌道は普通だが、『ボールの回転』が早い。一般論として、カーブはホームベース付近で失速する。そのため、日本の球界では「カーブ=緩急でタイミングを外す変化球」と捉えられているが、ペニーの投げるカーブ系の変化球は違う。強いスピンが掛かっているというか、『力勝負をするための変化球』のように見えた。しかも、低めにコントロールされているのだから、対戦打者は苦労させられるだろう。
念のため、米メディア陣の1人にこのペニーの評価を確認してみた。
「スプリット、スライダーも投げますよ。昨季は防御率が5点台まで落ち込み、残念ながら、メジャーでは『もう、先発としては通用しない』と見下されていました。彼は1月下旬までメジャー球団との契約を目指していましたが、お声が掛からず、日本に新天地を求めました」
30歳を過ぎ、メジャー球団と契約できない先発タイプの投手は少なくないという。ただ、制球力、クイックモーションなど日本球界で通用するには“それなりの要素”を必要とする。体格的に見て、クイックモーションは期待しない方が良さそうだが、ソフトバンクの渉外担当者は数多い“売れ残り投手”のなかから、「日本向きの投手を見つけて来た」と評価してもいいのではないだろうか。
3年目の左腕・川原弘之の成長が著しいという。工藤公康氏(解説者)がTVのニュース番組でイチ押ししていたため、各マスコミが「どんなピッチャーなんだ!?」と好奇の目を向けていた。確かにストレートは速い。秋山幸二監督も「チャンスはある」と各メディアにコメントしていたが、ブルペンではコーチに投球フォームを修正される場面も多く、「一軍枠に生き残れるかどうか」というのが、正直な評価だと思われる。
そんなブルペンでオーラを放っていたのは、FA加入の帆足和幸とドラフト5位・嘉弥真新也(かやま・しんや)の両左腕だ。32歳、得意のパームボールなどを低めに集めており、通算11年、4年連続160イニング強を投げてきたベテランにはやはり『貫禄』がある。スリークオーターの嘉弥真だが、真っ直ぐは「140キロに届くかどうか」。しかし、変化球が面白い。人指し指と中指を曲げて挟む『独自のナックル系ボール』はドラフト時から報じられていたが、カーブ、チェンジアップも武器になりそうだ。一見、「全体的にボールが高めに浮いている」と思ったが、よくよく見てみると、軌道が大きいため、錯覚させられていたのだ。
季は杉内、和田たちの離脱により、先発スタッフに一抹の不安が残る。大量にリリーバーを投入する試合も予想される。森福允彦の登板過多を防ぐ意味でも、この嘉弥真をベンチに入れておきたい。
また、川崎宗則の米挑戦により、正遊撃手が不在となった。20歳の今宮健太、新人の塚田正義(白鴎大)、トレードで帰還した金子圭輔が競っていたが(キャンプ前半)、守備力は横一線。そのため、打撃、走塁能力も『正遊撃手選び』のポイントになるだろう。まず、今宮、塚田は同じ俊足タイプ。昨季の二軍での起用法から察するに「今宮有利」と思っていたが、塚田の打撃センスは前評判以上だった。フリー打撃を見ていると、鋭いライナー性の打球を量産していた。柵越えはほとんどなかったが、打球は速い。広角に打ち分ける今宮の打撃も魅力的だが、バットでは「塚田有利」にも見えた。肩痛で出遅れた明石健志も帰ってくれば、『正遊撃手争い』はさらに厳しいものとなる(2月中旬時点)。好不調で選手を使い分ける起用法も考えられるが…。
このチームは選手層が厚いので、新しい戦力が出てくるのは必至だ。潜在能力の高い選手が多いのも、キャンプを見ただけで分かる。しかし、中堅、若手は出場機会が少なかったため、本当に「1年間を乗り切る体力と技術が伴っているのか」は判断が付かない。中堅、若手を入れ換えながらの戦いになるのではないだろうか。