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ダメ夫で心のバランスを保つ、宮崎あおい

 6月の末に公開になった主演映画「さんかく」(監督:吉田恵輔)が、思わぬ高評価を得ている俳優の高岡蒼甫。いままで「パッチギ!!」や「ROOKIES」、「クローズ ZERO」などケンカっぱやい不良ばっかり演じてきた高岡だが、恋人とその妹の間で揺れ動くダメ男・百瀬という役柄が、いつになくイメージに合っている。この映画のPRでテレビに出まくり、「妻ありきの自分」を強調してきた高岡。ヘマばっかりするが、実は彼の「ダメ夫ぶり」が若き国民的女優の心の支えだったりもする。

 「さんかく」の公開時、TBS系の「チューボーですよ!」など、バラエティ番組に出演した高岡蒼甫。チューボーでは「ナスのグラタン」をつくる傍ら、腕立て伏せを50回させられたり、司会の(巨匠?)堺正章の小芝居につき合わされたり。マチャアキがいつになく気に入った様子。この若手俳優は、まぎれもなく押しも押されもせぬ国民的大河女優・宮崎あおいの夫。堺と「親分」と「子分」の立場を逆転しながら鍋をかき回すアドリブの勘のよさなど、テレビ的にも扱いやすい。

 今回映画公開前にPRで走りまくって疲れてしまい、大事な舞台挨拶で貧血を起こして壇上からヨロけてしまった高岡。意地悪な世間は、すぐ「薬物に手を出したのでは?」などと勘ぐってしまう。高岡は今となっては役者として成功したが、育った家庭環境に恵まれず、10代〜20代前半の頃は貧しさゆえ放浪した苦労人。未成年の犯罪を扱った過去の出演作なども響いてか未だにイメージが悪いのも確かだが、生きるために必死だった過去に不良だったとしても不思議ではない。高岡はつい最近まで(というかあおいと結婚するまで)道端の石ころのように貧しく、さほど注目もされない俳優だったのだ。しかし苦労した彼に他の俳優にはない魅力があるのも確かで、若くして過剰な名声を得て、なにもかも完璧を求められる宮崎あおいが彼に惹かれた気持ちは少し分かる。

 どんなに表面を上手く繕っても、いつどんな形で世間が自分をバッシングするか分からない芸能界。若くしてトップに登りつめ、ギリギリの状態を保っている宮崎あおいのストレスは相当なもの。実は宮崎は、アジアの児童買春を扱った問題作「闇の子供たち」(監督:阪本順治)に進んで出演したり、世界の危険地帯を旅したり、おだやかな表面に似合わず内面はかなり熱く個性的。しかし国民的女優の立場上、何かを強く主張する事もなくひたすら「いい子」を演じて生きている。そんな国民的女優・宮崎あおいでも、女たらしでほころびだらけの高岡蒼甫を夫にしている間は、彼が負の部分を全部吸い取ってくれるので、たとえば宮崎自身がボロを出しても、自分が批判される事はない。彼女がそうなったのは何もかも夫が悪いという事になるからだ。

 考えてみると彼女にとって、こんなに都合よく、居心地のいい相手はいない。可愛くて、演技が上手くて、品行方正。女優として妻として完璧な宮崎あおいが鏡に写したダメ夫の高岡蒼甫。そして夫は世間の批判をものともせず、ひたすら我が道を行き打たれ強い。これが彼女にとって心地よく、夫がダメであればダメであるほど自分は安心するので、宮崎はますます彼を手放すことはないだろう。世間が何と言おうと、女優・宮崎あおいは、高岡のダメぶりで心のバランスを保っている。ダメ夫なくして、彼女のパーフェクトはありえないのだ。(コアラみどり)

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