遺体で発見されたのは、当時24歳の男性Aさんと、同じく当時24歳の女性Bさん。二人は同じ高校の出身で、当時交際していたと警察の調べで判明。BさんはAV女優として活動中で、同年にアイドルユニットを結成し、更なる活躍が期待されている最中での事件だった。
一体、二人に何が起きたのか。警察が捜査を進めると、Aさんの死因が焼死、Bさんの死因は数か所に及ぶ刺し傷によるものと判明。警察はAさんよる無理心中、もしくは殺人の可能性があるとの見方を強めた。
しかし、警察の無理心中とする見方にAさん遺族が反発。無理心中とするには余りにも不自然だと主張した。警察の捜査や知人の証言で確認された他殺説を裏付ける形跡は、Bさんの死因以外にも多数あった。車に灯油を撒いて着火されたにも関わらず、灯油を入れた容器が発見されなかったこと。Bさんの殺害に使用されたとされる凶器の包丁が、Aさんの利き手ではない左手で握られていたこと。車のドアは全てロックされていて、現場には血痕や指紋一つ残されていなかったこと。二人の遺体は素足のままで発見され、二人の靴はAさんの自宅に残されていたことだ。
また、二人とも事件以降に知人と会う約束をしていたことが警察の捜査により判明した。そして、Aさんに関しては、不審な人物とのやり取りが確認されたことが警察によって確認されている。Aさんは事件の数か月前に80万円を知人に貸していたのだが、借用書に記名された人物は存在していないという。
警察の動きにも不可解な点があった。地元警察が早々に事件を無理心中と断定し、Aさんの遺族にその旨を伝えていたことが判明している。
同年11月、Aさんの遺族が無理心中はあり得ないとして被疑者不詳のまま、二人を殺害した犯人を殺人罪で告訴。翌年2003年1月に地元警察署によって受理され、捜査が開始された。しかし、長野県警では捜査本部が立ち上がっていなかったため、Aさんの遺族は真相究明を求めて長野県警に対し行政訴訟を起こした。2003年4月には、Aさんの知人が中心となり、殺人事件としての捜査を要求する1万人を超す署名を集め、当時の長野県知事に手渡すも、県警に捜査本部設置を求める行政訴訟は却下された。事件から4年後の2007年1月23日、Aさんの保険金を巡って争われた民事訴訟で、裁判所はこの事件を他殺と認定している。警察と裁判所で意見が分かれる形となったことも不可解である。
事件に関して、ネット上では、二人が“ヤクザに消された”という噂も持ち上がっている。Aさんと知り合いのヤクザが、Bさんと性行為させろとしつこく脅迫。Aさんが断り続けたところ、怒ったヤクザがAさんとBさん二人を殺害したというものだが、もちろん定かではない。
不審な点が数々見られるのに、警察が頑なに無理心中と断定し、捜査を打ち切ったのは何故なのだろうか。謎は深まるばかりだ。