(38歳・ウェブビジネス)
A:仕事柄、時々、徹夜せざるを得ないことがあるとのこと。体によくないと分かっていても無理をするのが仕事、ともいえるでしょう。
睡眠不足が続き、借金のように溜まることを「睡眠負債」といいます。睡眠負債は、いろいろな病気の発症に関係すると考えられています。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、うつ病などの精神・神経関係の病気などです。そして、恐ろしいことに、脳にも悪影響が及びます。
睡眠中の脳は、日中にたまった有害なたんぱく質を除去します。掃除をして、メンテナンスをするわけで、それによって脳は健康を保たれます。ところが、睡眠不足が続くとメンテナンスができません。
●一晩の徹夜でも脳細胞は傷つく
これは、メンテナンス不足では済まず、記憶を司る海馬という部分が縮み、記憶力や認知能力が低下することが分かっています。脳細胞にダメージを与えるのです。
かつては、十分な睡眠をとれば、記憶力は取り戻せると考えられてきました。ところが、今では傷ついた細胞は元には戻らないと考えられるようになってきました。
しかも、一晩、睡眠不足になるだけで、脳はダメージを受けると分かってきました。
睡眠不足は、さらにはアルツハイマー型認知症を引き起こす原因にもなります。
このように、睡眠不足は心身に悪いことだらけです。ご質問の方は、そろそろ生活習慣病を発症しても不思議ではない年齢です。また、生活習慣病で薬を服用している場合、一例を挙げると、徹夜をすると降圧剤の効果を打ち消すといわれています。
睡眠は心身の健康の維持に重要です。質問の方はまずは、徹夜をしなくて済むよう、現在の業務の進め方を再考しましょう。一睡もしない、完全な徹夜だけは、絶対に避けるようにしましょう。
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今井一彰氏(みらいクリニック院長)
山口大学医学部卒業。東洋医学などさまざまな医療を駆使し、薬を使わずに体を治していくという独自の観点に立って治療を行う。日本初の靴下外来も設置。