DeNA戦で原巨人が逆転勝利を収め、マジックナンバー9が再点灯した。「投」のヒーローは、初先発のライアン・クック(32)と言っていいだろう。
「首脳陣は5イニングを投げさせる予定でしたが、4イニング目の途中で降板。試合後、宮本(和知=55)総合投手コーチが次の先発起用を示唆していました。合格点が付けられたようです」(スポーツ紙記者)
クック自身も打ち明けていたが、米国時代に遡っても、先発登板は初めて。過去、プライドが邪魔をして、コンバートや投球フォームの改造を受け入れられずに帰国していく元メジャーリーガーが何人もいた。「モチベーションが上らない」と言って、試合出場を拒んだ助っ人もいたくらいだから、クックは柔軟、かつ温和な性格でもあるようだ。
5年ぶりのリーグ優勝のキーワードは「復活」ではないだろうか。クックのほか、高橋優貴(22)、大竹寛(36)、田口麗斗(23)らが復調している。
「新人の高橋は好スタートを切りましたが、対戦チームに投球パターンを覚えられた途端、勝てなくなり、二軍落ちも経験しました。その高橋が短期間で帰って来ることができたのは『ストレートのキレ』です」(プロ野球解説者)
話は、7月31日に遡る。同日先発の高橋は初回に本塁打2本を食らった。しかし、2イニング目、高橋は“別人”になった。3者凡退に抑えたのだが、走者を置いていない場面でもセットポジションでの投球に変えている。オープン戦に遡っても、「無走者=セットポジション」は“初めて”である。
セットポジションにすれば、ボールを長く持って相手バッターの集中力を削ぐ、あるいは、クイックぎみに投げてタイミングを外すなどの投球テクニックが使える。ベテラン投手が用いる高等手段だ。この時点では「高橋は応急措置として、セットポジションで誤魔化したんだな」と思ったが、実際は違った。チーム関係者によれば、大学時代から取り組んでいた「2段モーション」へのフォーム改造に完全移行するための布石だったという。
「2段モーションにすると、体重移動の際、体に溜めができて、ストレートにキレや威力が増すんです」(関係者)
再びチャンスが巡ってきた8月11日、高橋は約3か月ぶりの勝利を掴んだ。2段モーションもサマになっていた。ストレートで空振りやファールを取るピッチングができたことが勝因だが、「ストレートの重要性」を認識した“意識改革”も影響していた。
「中継ぎで復活した大竹、田口も足を高く上げ、ストレートの威力を高めています」(選出・プロ野球解説者)
短い距離を全力疾走するダッシュ運動の量を増やし、体のキレを取り戻した。
クックも二軍選手に混じっての走り込みをし、牽制球の練習にも時間を割いてきた。こういう巨人二軍の指導状況を聞くと、金満補強の悪いイメージも薄らいでくる。(スポーツライター・飯山満)