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「丸太ごうし」(まるたごうし、おでん屋)」

 東京メトロ銀座線・浅草駅から720歩

 役者=大根、この符丁は分かる。ゲートル=ゲソ巻き、お祭の日の神社の境内には引き上げた傷病兵がいたから、これも分かる。二人仲=焼き豆腐、分かる。もつれ=しらたき、なるほど。月形=はんぺん、駄洒落ね。大内山=たまご、顔の長いお相撲さんだったが、うーん。
 創業83年、浅草は馬道にどんと構える「丸太ごうし」。店主に名前の由来を尋(たず)ねると、がらりと窓を開けて2寸ほどの丸太の縦列を見せてくれた。家紋の名称か、織物の文様かと悩まされたと言ったら、考え過ぎだと笑われた。
 詩人のサトウハチローさんがこの店をうたって「いつも春丸太ごうしの酒の酔」。この夜は3組もの女性客がいて、これならば本当に「いつも春」。司牡丹の熱燗を2本そう言って、ぬたと、ねっとりと舌にからみつく烏賊(いか)のお造りをいただく。この酒は確か、麻生太郎首相の祖父吉田茂の好物。祖父への劣等感など抱かないで過ごす人生もあったはずなのに。大日本帝国連合艦隊司令長官の孫のYさんが舞台芸術の仕事に就かれ、市井の人になっているのを知っている。較べて麻生氏は易(やす)きについた、のではないか。

 今夜は軽めにして引き上げようとしたら、女将から軽く注意された。おでんを食べない客にありがとうは言えない。分らないでもないけれど、そう言われて座り直して、しらたきを食う客がいるかしら。浅草に昼となく夜となく人が集まるのは、歴史と伝統へのよいしょみたいなものでして、それだけみんな浅草が好きだということなんですよ。店主がさらりと取りなしてくれた。はい、またあらためて伺います。

予算2500円
東京都台東区浅草2-32-11

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