同試合は、プロ注目の150キロ左腕及川雅貴投手を明豊打線が打ち崩し、大勝。9回の攻撃が終わると、両軍がホームベースの前に整列し、挨拶を交わす。すると、横浜の選手は1人を除いてそそくさとベンチへ。一方、明豊の選手は握手をするために近寄っていたが、横浜の選手が帰ってしまったため、しばらくその場に立ち尽くした。
高校野球では「試合後に健闘をたたえて互いに握手しなければいけない」というルールはなく、あくまでも自主的なもの。しかし、一部の高校野球ファンは許せなかったようで、横浜高校の選手に対し、「不愉快だ!」「負けたから握手拒否なんてとんでもないチームだ」「態度が悪すぎる」など、激しいバッシングを浴びせる。その勢いは凄まじく、「横浜高校」がトレンド入りするほどだった。
しかし、高校野球に詳しいファンからは「東京と神奈川は地元の高野連が試合後、握手をしないように通達している」との指摘が。また、高野連も「握手をしだすとキリがない」ことから、しないように推奨しているのだという。正式に発表されているわけではないため、真偽は不明だが、事実である可能性は高いようで、「マニア」からは「横浜高校はルールに従っただけ」と擁護が。また、「春はしないことも多い」という指摘もあった。
いずれにしても、試合後に健闘をたたえて、「握手をしなければならない」というルールはない。したがって、仮に拒否したとしても、それは許されるものであるはず。高校野球ファン以外からは、「叩いているファンのほうが怖い」「自分勝手な解釈を選手に押し付けないでほしい」「横浜高校がかわいそう」と高校野球ファンに批判が殺到した。
野球関係者はこう語る。
「社会人野球では、試合前と試合後、監督が握手するよう審判が促しますが、高校野球はそんなことはありません。選手が勝手に健闘をたたえて握手するようになったもので、しなければいけないというルールもないですし、そんな紳士協定もないですよ。単純に見ていて美しいとか、見る側の論理でしょう。本来はするもしないも自由なはずです。
まして、高野連はやらないよう推奨しているわけですから。高校野球ファンは高校球児が苦痛にゆがむ様子を美化した挙げ句、負けて腸が煮えくり返るような気持ちでも、『握手しろ』と要求する。勝手な様式美を高校生に押し付けるほうが、よっぽど問題ですし、パワハラですよ。
このままでは横浜高校の選手があまりにもかわいそうです。高野連は試合後の握手についての規定などを作り、公表していくべきでしょう。本来必要ないことですが、不当なことで叩かれる選手を出してはなりません」
頭が固いのは、高野連だけではなかった様子。握手をしなかったというだけで犯罪者のように叩かれる横浜高校の選手が不憫でならない。
文・櫻井哲夫