決定について、竹中雅彦事務局長は「認めないということではなく、猶予を考えてほしいということ」と説明。再考の根拠については「勝敗に影響を及ぼす規則については、全国で足並みを揃えて検討するべき」などとしている。要約すると「勝手に決めるな」ということである。
今後、新潟県高野連がどのように対処するか注目されるが、「親方」である高野連が早期導入に「NO」を突きつけた以上、従わざるを得ないのではないかとの見方が有力だ。
この件についての考え方は様々で、横浜高校前監督の渡辺元智氏は「足並みを揃えるべき」と全面的に支持するコメントを発表。一方、ロサンゼルスドジャースの前田健太投手やシカゴ・カブスのダルビッシュ有投手は、自身もエースとして甲子園で酷使されてきただけに、球数制限に肯定的な意見を示した。
高校野球投手の酷使はここ数年というレベルではなく、昭和の時代から問題視されていた。甲子園の優勝投手でプロ入り後200勝を達成した選手は、野口二郎投手(中京商業)と平松政次投手(岡山東商業)のみで、100勝を挙げることも難しいのが現状。愛甲猛投手(横浜高校)や金村義明投手(報徳学園)のようにプロ入り後、野手に転向する選手も多い。
また、プロに行けなかった選手でも、大学・社会人で疲労の影響からパフォーマンスを出せず、野手転向や通用せずキャリアを終えるケースがある。
これだけ問題があるにもかかわらず、長年その問題を放置し、利権だけを貪ってきた高野連。そのような流れにストップをかけようと新潟県高野連が立ち上がったことは大英断だったが、残念ながら本部のお偉方には届かなかった。
この決定にネットユーザーも怒りの声を次々と上げており、「意味不明」「旧態然」「どうしようもない組織」と批判が。一方、高校野球ファンは「当然。勝手にやられてもらっては困る」「つまらないルールを入れるな」「勝敗を競う高校野球にそんな物はいらない」「連投に耐える投手を見るのが高校野球の醍醐味」と高野連の決定を支持する声も。やはり、ファンと非ファンの意識の差は歴然としている。
「高野連は今後、専門家を交えた有識者会議を開き検討していくとしていますが、参加者は未定で、結局、高野連の主張を後押しするための組織になるだけでしょう。
甲子園大会は残酷ショーであるところが最大のウリで、日本の若者が苦渋に顔を歪める姿を冷房の効いた部屋で楽しむのが通例。それでガッポリ収入も得られるわけですから、利権が離れるようなことはしませんよ。
主催は『国民の代表』と名高い新聞社の記者さんたち。高野連の決定が、国民の決定とでも思っているのでは」(野球ライター)
その旧態然とした運営に批判が集まる高野連だが、収益が上がっているだけに、現在のレギュレーションを変更されては困ると感じているようだ。
文・櫻井哲夫