昨年末、新潟県高校野球連盟は投手が1試合に投げられる投球数を制限すると決めた。1試合当たりの球数を100球までにするという。2019年春季大会に限定したルール化であり、大会終了後に「球数制限が故障防止に効果があったどうか」などを検証することになっている。この新潟県の決断に全国を統括する日本高等学校野球連盟(以下=高野連)は否定的な見解を見せているそうだ。
「2月20日に高野連は理事会を招集します。そこで議案に上げることは決まっていますので、投球数制限についての意見交換がされるのは間違いありません」(私立校指導者)
そもそも、1試合で投げられる投球数や登板間隔について「明確なルール作りをすべき」だとの声が高まったのは、昨夏の甲子園大会がきっかけだった。
金足農・吉田輝星投手が地区予選1回戦から甲子園大会決勝戦までを1人で投げ、最後は力尽きるようにして後続にマウンドを譲ったシーンが、あまりにも衝撃的だったからだ。
「連日、30度を超える真夏日でした。熱中症などの熱さ対策も加わり、球児の健康を守るための手段を考えるべきだ、と」(スポーツ紙記者)
高野連は大会中に休養日を設けるなどし、対応を続けてきた。怪我の防止策として、出場校全てに対し、投手登板する可能性がある選手全員にレントゲン検査を受けさせている。タイブレーク制の導入にも踏み切った。高野連は怪我防止策に積極的である。なのに、投球数制限にだけは慎重な姿勢を崩そうとしないのだ。
「投球数に制限を設けたら、投手の少ない学校は不利です。試合が成立しなくなる可能性だってある」
実際に現場を預かる指導者からは、そんな声も聞かれた。また、プロ野球解説者の中には「故障=過度な投球数」の解釈に否定的な意見を持つ者も少なくない。「正しい投球フォームを習得させれば、故障しない」というのだ。投球数制限の議論の契機となった吉田輝星だが、日本ハムキャンプでは元気に投げ込んでいる。その姿を見ると、「球数制限よりも正しい投球フォームの習得」の理論も間違いではないようだ。
「夏の甲子園大会での熱さ対策は、早急に解決しなければならない問題です。もっとゆるやかな日程スケジュールが組めるのなら、一日のうちで最も熱い正午から午後2時の間、試合を組まないなど措置ができ、投手の怪我防止になると思うんですが。今以上に甲子園球場を長く借り切るとなれば、プロ野球側にも協力を要請しなければなりません」(関係者)
何が言いたいかというと、高野連は球数制限ではなく、日程調整で投手の怪我防止の問題を解決したいようなのだ。
もっとも、今回の新潟県が独自の判断で投球数制限を設けたことに対し、好意的な他県の現場指導者は少なくないとの情報も聞かれた。2月20日の理事会において、高野連は「慎重に審議を続けていき…」の言葉で結論を先送りするだろう。そして、今以上にゆるやかな日程調整を組む可能性を探っていく。その真意が出席理事に伝わらなければ、新潟県の決断に追随する県も出てくるだろう。
吉田輝星はプロのユニフォームを着て、平然と投げ込み練習を続けているが、2月20日の理事会は大混乱となるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)