今回の大会では、7月中旬からの異常な猛暑で予選から熱中症で倒れる選手・観客が続出。試合をナイター開催にするなど、対策を講じる地区も出たが、多くの地域ではほぼ「通常営業」で、その危険性が指摘されていた。
大会前、日本高等学校野球連盟(以下、高野連)は対策として「給水タイムを設ける」「アルプス席にミストを撒く装置を設置する」などしたが、ほとんど効果はなく、開会式の時点で17人がダウン。さらに期間中も、審判員が倒れ交代する場面や、選手が足をつるなどするシーンも。結局、343人が熱中症によってダウンすることとなった。
金足農業高校の躍進で空前の盛り上がりを見せ、ネット上では「やっぱり甲子園が一番」「京セラドームではこの感動ではない」「アンチ息してない」など、「高校野球ファン」が元気を取り戻している感のある甲子園大会。
しかし、金足農業・吉田投手の酷使や過密日程、創志学園・西投手への理不尽な「ガッツポーズ禁止」など、高野連の不可解かつ高圧的な態度など、「おかしなこと」も満載で、「時代遅れ」を指摘する声も多かった。
秋田県から多くの人が訪れたこともあり、総入場者数が100万人を突破する見込みの甲子園大会だけに、主催者の高野連と朝日新聞にとっては現在まさに「ホクホク顔」。この「ドル箱」を手放すはずもなく、来季以降も真夏の甲子園で大会を開くものと思われる。
しかし、夏の暑さが異常となるなかで、343人が熱中症となり、選手や審判にも影響が出たことは紛れもない事実。熱中症対策が事実上無意味だったと取られても仕方ないだろう。死者が出てからでは遅いのだが、主催者サイドは「盛り上がりを見せて万事OK」ということのよう。
筋書きのないドラマが人々に「感動」を与えたことは事実だが、一方で選手観客に生命の危険を与え、我慢大会の様相を呈していることもまた、事実。主催者はこのことについて、どう考えているのだろうか。
取材・文 櫻井哲夫