ドキュメントバラエティーと呼ぶにふさわしい同番組は、初回オンエアが「たたみ方」という次元の低さからスタートした。その後は、「キッチンの汚れ落とし」、「冷凍保存」、「食材を切る」など、さながら日本テレビ系列の昼の情報生番組「ヒルナンデス!」だった。ところがその後は、深夜帯にふさわしい脱線力を身に着けていった。人気番組を堂々とパクり始めたのだ。
「テラスハウス」のオマージュというべく好評だったのは、「家事リアリティショー KAJIYARO HOUSE」。ゴールデンタイムの特番でしょっちゅう目にする“○○24時”がヒントであろうと想像できるのは、「リアル家事24時」。東大謎解きブームが訪れると、「東大京大合格夜食グルメ」。“高嶺の花”ならぬ、「背伸びして作ろう!!高嶺の皿」。テレ朝発のお笑いブランド「M-1グランプリ」ならぬ、「F-1グランプリ」もあった。“F”はフルーツ。酢豚に入っているパイナップルのように、食材と掛け合わせておいしいフルーツの№1を決めるものだった。
およそ1年半前の番組スタート時、ノー家事ライフを送っていた3人は、自分に家事能力があるのかないのかさえ知らずにいた。幸いだったのは、肝となる制作スタッフの男性3人も同等のスキルだったことだ。
スタッフがおのおの自宅で試作や実験を重ね、GOサインを出せたものだけ、スタジオでタレントにトライさせた。スタッフは、ココリコやタカアンドトシ、よゐこなどをスターにした“黄金伝説。”シリーズを手がけた面々。手間暇かけ、万全なリハーサルを重ね、ガチの長時間ロケで驚くほどカメラを回して、番組を丁寧に作ることで知られる精鋭だ。
中丸は36歳。バカリは43歳。カズは35歳。そろってガヤ系タレントではなく、どちらかといえば脱力系。声を張って芸能人たらんとすることを、必要以上に嫌う。平常心のままで収録に挑み、波風が立たない進行を好み、感情の起伏もさほどない。「ノーストレス。(芸人のように)『ちょっと待ってくださいよぉ〜』と言わなくていい」(カズ)のが、深夜のディープな時間帯にちょうどよかった。
しかし、10月2日から毎週水曜日の23時15分スタートという昇格。テレ朝バラエティのゴールデンタイムと言うべく、“ネオバラ”枠へお引越しだ。持ち時間も、30分からちょうど倍の60分にスケールアップ。3人は、家事を学ぶベースと、普段着トークという低いテンションのまま、“テレ朝のGタイム”に挑むこととなる。
10月のバラエティ改革。まずはお手並み拝見だ。
(伊藤雅奈子)