福井県の敦賀市と今庄町を繋ぐ北陸トンネルは非常に長く総延長は13870m、特急列車でも通過に約7〜8分はかかる非常に長い陸上鉄道トンネルである。特急でもこの時間なので、普通列車だとゆうに10分以上もトンネルの中にいることになる。
今も昔も陸上交通と輸送の要となっているこのトンネルだが、実は奇妙な話が報告されている。
ある人が関西から金沢まで行った時の事。新大阪から北陸方面に行く特急で赴いたのだが、長い北陸トンネルで少し寝入ってしまったらしい。すると、自分がもたれていた窓を叩く音が数度して、彼は思わず目を覚ましたという。はっと目を開けると窓の向こう側に、手首が引っ込む所が見えた。ああ、誰かが起こしてくれたのか、と思った所で、自分が特急列車に乗っていた事を思い出してぞっとしたという。
これと同様の体験をした人は何人かおり、普通列車で体験した人もいる。しかし普通列車にしても特急列車にしても、車より速いスピードで停止することなく駆け抜ける電車の窓を叩く事など出来るはずがない。もしトンネル内に作業員がいたとしても通過中は退避しているし、運転手も注意して運行させているのでまず有り得ないはずなのだ。
他にも奇妙な体験をした人は多く、「トンネルに入ると、車内の人の気配が増えた気がした」「トンネルにいた時だけ、前の席に座っている人の頭が増えていた」などの証言もある。霊感の強い人による「このトンネルには多数の霊体がいる」という意見もある。
実は、北陸トンネルには過去に火災事故が起き、死傷者が多数出たという記録が残っている。それ以外にも、トンネルという大規模な暗い空間には何かが棲み着く、とする話もある。彼らが見たのは果たして何だったのだろうか。
(山口敏太郎事務所)