「ボクも非常に寂しい。プロだから、トレードは仕方ないが、出すべき選手ではなかったと思う」と明言した山崎は、20日の契約更改交渉の席で「選手が迷うようなことは避けて欲しいとお願いする」という。
選手たちが渡辺の金銭トレードに猛反発しているのは、ポスティングシステム(入札制度)でのアスレチックス入りがご破算に終わったエース・岩隈の残留余波で、犠牲者になったととらえているからだ。岩隈がすんなりとアスレチックス入りしていれば、15億円もの落札金が楽天に入り、星野監督が推進している大補強の資金になるはずだったのだ。
岩村、松井という日本人メジャーリーガーコンビの三遊間誕生も、岩隈マネーをアテにした補強だった。ところが、「4年12億円」という契約条件に不満の岩隈が残留を決断。「岩隈の落札金15億円と来季の岩隈の年俸3億円、合計18億円の補強費が消えたようなものだ。球団側、星野監督はどうするんだ」という、今後の対応を不安視する声がチーム内外から噴出していた。そこへ渡辺の横浜への金銭トレードだ。
「岩村、松井のメジャー帰りコンビを取った後に補強費用が消えてしまったものだから、2人の控えに回る渡辺を出してすこしでも経費削減しようとしているのだろう。金銭トレードだから、入ってくるお金もある」。楽天ナインはこう考え、猛反発しているのだ。
今季年俸6000万円弱の渡辺だし、金銭トレードの額も知れているだろう。それでも消えた大補強資金用の岩隈マネーを少しでも埋めたい球団側は、なりふり構っていられないのだろう。
渡辺の次は誰が犠牲者になるかわからない。楽天ナインの悔し涙の裏には、そういった戦々恐々たる思いもあるはずだ。「星野のやり方は、お金をかけて選手を取ってくるだけや。選手を育てることができんからな。が、阪神では成功しても楽天ではどうかな。疑問やで」。こう真っ向から星野流大補強を否定しているのは、元監督で現在楽天名誉監督の野村克也氏だ。
渡辺は野村監督が育てた選手の1人だけに、星野監督に対する舌鋒はさらに厳しくなるだろう。阪神の時には、3年連続して最下位に終わった野村監督が解任され、後を受けた星野監督がリーグ優勝という間柄だったが、蜜月関係だった。
「ワシが3年かけて土台作りをしたから、阪神は優勝できたんや。赤星など育てたのもワシや」。野村氏がこう自画自賛しても、星野監督は勝者の余裕で「本当にそうやな。ノムさんが土台を作ってくれたことが大きかった」と野村氏礼賛を惜しまなかった。
が、今回はそうはいかない。それでなくとも就任4年目で2位になり、続投に固執していたのに、勇退させられ、名誉監督に棚上げされた野村氏は、今でも球団側に対する恨み辛みがある。しかも、星野監督が成功したら、野村遺産は全否定されてしまう。早くも星野バッシングをしているのも、自らのメンツがかかっているからだ。今回の渡辺放出によるチーム内乱は、野村氏にとって格好の星野攻撃の材料になる。
「まだまだ補強するぞ。これからは投手だ」と大号令を発していた星野監督の方も岩隈マネーが消え、神経をとがらせているだろう。野村毒ガス口撃に過剰反応するのは避けられない。星野監督vs野村名誉監督の全面対決に発展する恐れがある、今回の内乱。今後の成り行きから目を離せない。