昨年10月、同社は住宅整備大手の住生活グループと球団売却交渉を行い、決裂している。神成尚史取締役は現時点での球団売却交渉の有無こそ明言を避けたが、ベイスターズのバックアップを強調したうえで、「もし(買収を)希望するところがあれば、お話しは窺いたい」と、売却に含みを残した。
ベイスターズはどうなるのか−−。
経営母体がグラ付くと、戦力編成にも多大な影響をもたらす。昨秋ドラフト会議で球団スカウトはこんな質問を受けたという。「大丈夫ですか?」「教え子を路頭に迷わすようなことになりませんよね?」など−−。学生、アマチュア野球指導者にすれば、当然の質問だろう。「横浜に指名されたくない」と話すドラフト候補生はいない。しかし、スカウトたちは経営状況について質問されるときもあり、答えに窮するそうだ。
開幕から約1カ月が過ぎた28試合時点で、11勝16敗1分け。最下位である。しかし、試合内容は決して悪くない。5月6日からの5連勝にも意義があった。また、序盤戦で失点が重なっても、選手は「下」を向かなくなった。チーム全体に「なんとかしよう!」という意気込みもあり、「4年連続90敗」なんてことにはならないだろう。
チームの牽引役は主砲・村田修一。その引き締まった表情を見せられると、チーム再建の意気込みも一過性でないことは確信できた。
「尾花(夫)監督と選手たちの間に『壁』がなくなったのが大きい。チームの雰囲気も良くなっている」
報道陣からはそんな評価も聞かれたが、エース・三浦大輔の“不在”は痛い。単に勝ち星や登板試合数だけなら、近年の三浦のそれを上回る若手投手はいる。しかし、三浦はチームの精神的支柱である。
自身の好不調に関係なく、三浦は試合前の横浜スタジアムのスタンド階段を必至に昇り降りし、ベンチ入りしない日も球場入りして他ナインと一緒になって試合前練習を続けてきた。「背中で引っ張るリーダー」なのである。村田が野手陣をまとめているが、三浦が一軍に帰って来て、そして勝利したときにベンチの士気がホンモノになるのではないだろうか。
尾花監督はチーム再建の第一弾として、投手陣の編成に着手した。昨季、左の先発投手が挙げた勝ち星は僅か3勝である。それを考えれば、オリックスから移籍してきた山本省吾の健闘、2年目の真下貴之の成長は大きい。
「若い投手が頑張っているので、チームの雰囲気もいい」
そんな声も聞かれた。交流戦以降、勝ち星を積み重ねていくには、清水直行、大家友和の復調が不可欠だ。対戦チームは、まだ横浜をナメている。三浦不在もそうだが、経験豊富なベテラン投手がいないため、相手チームに睨みが利かないのである。新人・須田幸太、真下、阿斗里らは一人前になるまで、もう少し時間が掛かるだろう。
真下は5月10日の巨人戦でプロ初勝利を挙げている。だが、15日のヤクルト戦では2イニングで降板を命じられた。本当に若手を育てるつもりなら、「打たれるのも勉強のうち」だ。それは尾花監督も分かっているはずだが、「中4日」でプロ2年目の若手を投げさせるとは、やはり、「頼れる投手」の頭数が足らないということだろう。そういうチーム事情を改善させなければ、頭角を現しつつある若手を潰してしまう。
三浦、清水、大家は一軍復帰の目処は立っていない(16日時点)。プエルトリコ出身のルイス・エンリケ・ゴンザレスの入団テストを行い、左投手の強化をさらに進めているが、この時期に来日してきた外国人投手を見極めるのは難しい。セ・リーグは昨季優勝の中日がもたつき、阪神、巨人もスロースタートとなったが、チーム総合力の高い3球団がこのまま終わるとは思えない。広島、ヤクルトが戦力を整えてきた以上、確実に最下位を脱出するには、国内トレードで先発タイプの投手を補強すべきではないだろうか。
また、期待の主砲・筒香嘉智が二軍でくすぶっているのも気掛かりである。
真下の「中4日、2イニング」での降板も裏を返せば、尾花監督が「勝利」にこだわった結果かもしれない。チーム打率は2割4分台をウロウロしている(5月第3週)。打線に破壊力がない。昨季は不振に喘いだ吉村裕基が復調の兆しを見せているが、「もう1枚」が足らないということか。球団はプエルトリコ出身のルイス・エンリケ・ゴンザレスの入団テストを行い、左投手の強化をさらに進めているが、打線強化にも着手しなければならないだろう。筒香のレベルアップがますます急がれる。(スポーツライター・飯山満)
※ルイス・エンリケ・ゴンザレス投手の方仮名表記は共同通信社配信ニュースを参考と致しました。真下貴之投手は『眞下』と表記するメディアも多くありましたが、本編は廣済堂出版刊のプロ野球選手名鑑にしたがいました。