「1イニング平均15球」とした場合、4回まで投げて60球到達となる。そう考えると、菅野はソロアーチこそ食らったが、実に効率良く投げ抜いてくれたわけだ。また、プロ野球解説者の多くが語っているが、WBCを勝ち上がっていくポイントとして、先発投手を降板させたあとに、もう一人の先発タイプの投手の存在が挙げられていた。
菅野のあとを託される“ロングリリーバー”は誰になるのか、その交代の時期は――。
4回を投げ終えたとき、交代するのかどうか、ネット裏の意見が別れた。効率の良い投球内容からして、「投球数制限内で5回まで行けるのではないか」の声も多く聞かれた。投球数の制限ルールだが、細かいところまで見れば、65球に到達した時点で2アウトを取っていれば、そのイニングは投げきっても良いことになっている。「あと17球」で、アウトカウント2つなら、今日の菅野でも十分行けるのではないか…。しかし、結果は、1アウトを取った時点で57球、次打者にファールで粘られ、「一死一・二塁」の場面で交代することになった。
その岡田俊哉(25=中日)がワイルドピッチや制球難で満塁までピンチを広げてしまい、大量失点に陥り掛けたところを二塁手・菊池涼介(26)の好守に救われた。
岡田は昨季57試合に登板したタフネス左腕だ。もし、その岡田が5回のマウンドを最初から任されていたら、投球内容は違っていたのではないだろうか。
スポーツの世界で「もしも…」は禁物だ。球場入りしていたプロ野球解説者の一人がこう言う。
「経験豊富な権藤さんのことです。イニングの途中なら岡田、菅野が5回を投げきっていたら、6回からは千賀と決め、彼らにもそう伝えて準備させていたと思う。昨季、岡田はイニング途中からマウンドに上がったこともあったはず。その岡田がオドオドしてしまうんだから、国際試合はコワイよね」
投手を交代させる時期の見極めは、本当に難しい。「好投している」となれば、なおさらだ。攻守交代の見極めというと、思い出してしまうのが、北京五輪の敗退だ。星野仙一監督(当時)は後続を出し惜しんだのか、岩瀬仁紀に“イニング跨ぎ”を課して失敗した。続投は結果論だが、「岩瀬はシーズン中、イニング跨ぎをやっていたか?」の非難も聞かれた。
菅野を続投させた今回のオーストラリア戦だが、岡田の次の登板がちょっと心配になった。ピンチに陥ったときの顔面蒼白ぶりは、次登板に影響しないだろうか。
「初戦でリリーフ登板した投手の何人かが失点しています。権藤さんは救援陣に若干の不安を抱えていたから、菅野を引っ張ったんだと思う」(前出・プロ野球解説者)
東京ドームのブルペンだが、3人同時に投げられるように造られている。しかし、一塁側、三塁側ともに3つ目のマウンドにシートが掛けられ、使えない状態になっていた。大会ガイドブックにはブルペンのことは記載されていなかったが、規制があったのだろうか。同時に2人までしか準備できないとなれば、投手継投はますます難しくなる。名伯楽・権藤コーチはどんな策を講じているのだろうか。(スポーツライター・飯山満)