松田は本塁打を含む5打数4安打とその期待に応えた。試合中盤、東京ドームのプレスルームを出ると、通路にまで松田のナインを鼓舞する声が響き渡っていた。松田が打てば、チーム全体が盛り上がる――。小久保監督の狙いはそこにあったわけだ。
その松田が『走塁』でもチームに貢献していたという。
2回一死、松田がセンター前安打で出塁した。次打者の小林も同じくセンターに弾き返すのだが、犠打のサインが出ても決められず、ヒッティングに切り換えての“結果オーライ”だった。松田が三塁まで進み、打席には2年連続トリプルスリーの山田哲人(24)を迎えた。その山田が打ち損じて三塁ゴロとなったときだった。松田は本塁に飛び出し、『三塁−本塁間』に挟まれ、タッチアウト。スタンドからはため息も聞かれたが、侍ジャパンのスタッフたちは「さすが、松田」と称賛していた。
「いや、一戦必勝のゲームなんだから、アレでいいんだよ」
本塁を狙った積極性を買ったのかと聞くと、完全否定された。
「一死一・三塁の場面なんだから、『5-4-3』で併殺プレーが成立していたかもしれない。松田があえて飛び出し、タッチアウトになることで、二死一・二塁に変わる。これなら、次打者の菊池(涼介=26)、青木(宣親=35)に期待が持てるじゃないか」(関係者)
このイニングは得点を挙げることはできなかったが、松田の“次打者に期待を残す”走塁が、後の大量得点につながったと見る関係者は多かった。通常のペナントレースであれば、松田が飛び出したことは凡ミスだが、一戦必勝の短期決戦ではこちらが正解だというのだ。
4回、山田の一撃がレフトスタンドに突き刺さったと思ったが、審判団はファンがフェンスを乗り出してボールに触れたのを見逃さなかった。三塁塁審が山田をストップさせたときは、一体何が起きたのかと思った。メディア配布された資料によれば、「本塁打かどうか」に限り、ビデオ判定をするルールになっていた。“疑惑”を見逃さずに、映像確認を行った審判団のファインプレーではあるが、マイクで観衆に説明しないまま、ゲームは再開された。できれば、説明してほしいと思った。
ハプニング、インサイドワーク…。野球は難しい。壮行・練習試合で負け越した侍ジャパンの打線爆発を、誰が予想しただろうか。(スポーツライター・飯山満)