「キャンプ途中でのトレードは決して珍しくありません。ただ、大谷の二刀流としての出場サイクルが確立するのは6月以降かもしれません」(米国人ライター)
順調にいけば、「投手・大谷」のデビューはペナントレース早々に見られそうだ。初の実戦形式での登板となったこの日、大谷は打者7人に対し、約30球を投げたが、ヒット性の当たりを1本も許さなかった。相手はマイナーリーガーだが、「格の違い」はしっかり見せつけた。
「ネット裏、右中間のフェンス付近で球団首脳陣や関係者がずっと大谷のピッチングを見ていました。先発ローテーションで使うから、注視していたんです。大谷の放った約30球のうち、半分近くはボール球でした。でも、この時期にこれだけ威力のあるボールを投げられたのだから、首脳陣は合格点を出したはずです」(特派記者)
エンゼルスは大谷を投手と打者の両方で使うことを“公約”している。「先発したら、翌日はオフ。翌々日はDHで出場して、さらに翌々日にまた先発して…」といったように、二刀流の出場サイクルが確立するまで時間が掛かるという。そう予想する米メディアは少なくない。
「メジャーリーグは先発投手5人を中4日のサイクルでまわすのが一般的です。でも、エンゼルスは大谷を投手と打者の両方で使うため、先発投手の6人態勢で臨みます。でも、4月、5月は移動がさほどハードではないので、6人でまわす必要がないんです。ソーシア監督は4月からの2か月間は『投手・大谷』に比重を置いた使い方をすると思われます」(前出・米国人ライター)
ソーシア監督は、今季19年目を迎える名将だ。しかし、どちらかというと、我慢強く選手を使うタイプではない。主力選手の不振が長引くとスタメンから外す。マイナーから昇格してきた若手に対しても、すぐに結果を出せなければ“出直し”を通達する非情さも兼ね備えている。しかも、監督としての契約が今季で満了となる。指揮官が契約の延長を意識するとすれば、大谷の二刀流にばかり気を取られるようなことはしたくないはずだ。近年のエンゼルスは低迷が続いているだけに、指揮官が今季に掛ける思いはかなり強いはずだ。
他球団だが、大谷獲得に動いたメジャースカウトの一人がこう続ける。
「どちらかというと、投手・大谷はすぐに結果を出せるが、打者としてはちょっと時間が掛かるかもしれないと見ていました。打撃センスはバツグンですが、一線級の投手が相手だと振り遅れて差し込まれるかもしれない。二刀流なら、打席に立つ機会も多くないし、そういう意味で苦労すると予想されていました」
打者出場した大谷がバットですぐに結果を出せなかった場合、“見切りの早い”ソーシア監督のことだ。「しばらくは投手一本で」と判断する可能性は高い。またその場合、投手出場しながら、打者としてレベルアップをはかることになる。その苦労は並大抵ではないだろう。開幕からしばらくは「代打出場」と予想する米メディアもいた。
「エンゼルスはすでに大谷を『特別扱い』しています。期待の大きさでもありますが、期待した選手がすぐに結果を出せなかった場合のソーシア監督は“決断”が早いですからね」(前出・同)
17日の打撃投手登板だが、実は、大谷一人のために急きょ用意されたものだった。
ペナントレース序盤に投手デビューさせた後、二刀流のルーティンを確立するため、いったんマイナーに降格させると予想するメディアもあった。こちらは投打ともに大谷を成長させるためのプランとして好意的に伝えていたが、リーグを代表する好投手がいないチーム事情を考えると、「投手・大谷」をローテーションでフル稼働させたほうが良さそうだ。いずれにせよ、二刀流のルーティンが確立されるにはそれなりの時間が掛かりそうだ。