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高橋四丁目の居酒屋万歩計(1)「利休庵」(りきゅうあん)

 東京メトロ銀座線・半蔵門線、三越前駅A4出口から徒歩180歩

 JR東京駅発のブルートレイン「富士・はやぶさ」のラストランに立ち会おうと、3000人のファンが押しかけ、長さ350メートルの10番線ホームは人で溢れかえった。
 JR御茶ノ水駅に近い「カザルスホール」の取り壊しを惜しんで、バッハの無伴奏チェロ組曲で有名な演奏家の名前を冠したコンサートホールに、500人のファンが押しかけ、パブロ・カザルスの写真が飾られたロビーは人で溢れかえった。
 わたしがいたのはカザルスホールである。カザルスホールが、現所有者である日本大学の事情で取り壊されることになった。建物が10年を経るまで待って設置された、パイプオルガンへの優しい配慮もこれで無になる。どこに移設されるのかもわからないパイプオルガンを聴きに、ワンコイン500円を握って並んだのは定員550人に対して500人。
 中にはパイプオルガンもさることながら建物を見にきたわたしのような者もいて、茨城県の水戸芸術ホールとの比較論をしていた。

 少し肩を落とし、御茶ノ水から神田に出て銀座方面を目指す。「利休庵」は、江戸のミッドタウン(中核)室町の本寸法の蕎麦屋。誰を同道しても外したことがない。家族や部下や上司や女友達、なによりも飲み仲間を連れてきて感謝されなかった験(ため)しはない。有名な刃物屋、有名な鰹節屋など、いずれ劣らぬ長い歴史を誇るこの地区の、クラシカルな蕎麦屋に一緒に行かないかと誘われたら、ついていったほうがお得です。
 1階は食事客に譲って、飲むなら地下です。そしてつまみには、いたわさ。言わなくても突き出しとして出てきます。それで足りるならそのように。海苔をお忘れなく。
 旧三井財閥の中枢が軒を並べる日本橋室町の、三井銀行跡に柱と構えを踏襲して建てられたのがマンダリン・オリエンタルホテル・東京。ここからの眺望は角度が目新しいので都会は別の貌(かお)を見せて美しい。マンダリンとは、初めは中国清朝の高級地方行政官の呼称だったが、最後は俗物官僚の代名詞となった言葉。
 変わった命名だとは思うが、“東洋的高級官僚旅籠東京”氏も志し高く、利休庵を見習って日々精進してくれることを希望する。柑橘類からの命名であれは、これを訂正する。

予算2500円
東京都中央区日本橋室町1-12-16

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