森本は2004年3月にJリーグ史上最年少の15歳10カ月6日で公式戦デビュー。18歳でイタリアへ渡った。3年目の今季はセリエA4得点。ユベントス戦で得点するなど「大物キラー」ぶりを遺憾なく発揮している。若き才能に岡田武史監督も興味を示した矢先の発言だけに衝撃的だ。
森本が日本代表入りを警戒するのは、08年夏の北京五輪の苦い経験があるからだろう。反町康治監督(現湘南)率いるU-23(23歳以下)五輪代表に森本が召集されたのは本大会2カ月前。非凡な得点感覚が認められ、最終メンバーには選ばれたが、チームに適応する時間が少なすぎた。前線からの激しい守備やハードワークといった日本特有のスタイルにも戸惑い、まったく活躍できなかった。不本意な結果が代表への恐怖心を植えつけたのではないか。
今の岡田ジャパンは、FWにゴールだけでなく豊富な運動量や守備も求めている。田中達也(浦和)らが重用されるのも、前線を動き回ってチャンスを作るなど、多彩な仕事ができるからだ。だが森本は根っからの点取屋。カターニャのゼンガ監督からも「ゴールを決めることだけ考えろ」と言われている。そんな彼を岡田監督がすぐ使うとは思えない。「北京五輪の時のように中途半端になるなら、イタリアでのプレーに専念していた方がいい」と森本が思うのも不思議はない。
とはいえ、得点力を上げられる可能性を秘めた若いFWに「行きたくない」と言わせてしまう日本代表とはいかがなものか。岡田監督の哲学が凝り固まっているのも大きな問題だろう。南アW杯行きも見えてきたのだから、指揮官には今一度、チームの方向性を考え直してもらいたい。