“偶蹄目(ぐうていもく)”と呼ばれる、ヒヅメが偶数ある、牛、豚、ヤギ、羊、鹿、イノシシなどがかかる伝染病で、4月に宮崎県で発生。これにより、畜産農家は多大なる影響を受け、殺処分という酷い惨状にも見舞われ社会問題に。
そして、これらの動物たちと「ふれあい体験」ができる各都道府県の施設では、この“ふれあい”を一旦自粛。長期戦となったこの問題は、夏にようやく終息を迎えることとなった。
ということで、私は、埼玉県は秩父市にある『秩父高原牧場』、別名『彩の国ふれあい牧場』へ行ってきた。東京ドーム75個分もある広大な敷地は関東平野が一望でき、牛や羊が放牧されている。また、バター、チーズ、アイスクリーム、牛乳プリンなどの手作り体験もできて、味はすこぶる濃厚。施設で売られているコーヒー牛乳はかつて飲んだことのない味わいだ。
そして羊には名札がつけられており親近感を抱く。
「クララー! クララー!!」
大きな声がこだまする。小さな女の子が小さな羊に呼びかける。
「こっちにおいで、クララー!」
目をつぶって聞くと、何だか懐かしい響き。
それにしても羊たちは健気(けなげ)である。自由気ままに歩くものもいれば、座り込んでじっとしているもの、また人間たちに寄り添い、愛を求めるものもいる。優しい瞳は悲しい事実を胸に刻ませる。
何事もなかったかのように、牧場ではゆっくりとした時間が流れる。いつまでも元気でいて欲しい。心からそう願う。
小さな女の子が小さな手を振る。
「さようならクララー!!」
(「はぐれ旅ライター純情派」海飛車鱗(うみとしゃりん)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou