人工多能性幹細胞である。iPS細胞とは簡単に言えば皮膚、脳、内臓、などの細胞に変化する夢の細胞である。具体的に言うと、iPS細胞を生成しこれを応用する技術が進化すれば将来的には人間の臓器をすべて再生することが可能であり、病気になった臓器を丸ごと新しいものに変えてしまうなど人類に計り知れない益をもたらす細胞である。
2007年11月21日、米学術雑誌に京都大学の山中伸弥教授の研究チームが、この夢の細胞「iPS細胞」を生成する技術の開発を発表した。しかし、同日、まったく同じ方法でiPS細胞を生成する技術の論文をウィスコンシン大学のジェームズ・トムソン教授も発表したのである!
「この発明が人々の生活に与える影響を考えると、大発明には不思議なエピソードが付きまとうのだな、と思わざる得ない」と語るのは、とある医療関係者。
「この発明のすごいところは、技術が確立すれば、比較的簡単に皮膚や臓器などを再生することが可能という点。この細胞の発明より前にすでに基礎医療の現場では、応用されているES細胞という細胞の技術が発見・研究されていましたが、韓国の研究者の捏造により再生医療への応用は大きく立ち遅れてしまいました。そこにきての発表なので、この発明が再生医療研究に与えた希望の大きさは計り知れないものがあります」
気になるのはこの特許の行方が山中教授、トマソン教授どちらのものかという話であるが…。
「実はこの発明の大きさに狂喜乱舞した世界中の研究者が応用、発展の研究に着手し、具体的な特許論争より先に研究競争が巻き起こり“誰が発明したか”については先送りされている状況です。また、この世紀の発明をした山中教授は欲よりも純粋に“人々のために”という人類の未来について真摯な姿勢を持っているお人柄。あまり過激な特許闘争は起こらないかもしれませんね」
現在、iPS細胞の研究は盛んに行われていて、具体的に5年後には移植再生医療に画期的な成果をもたらすといわれている。
当然、山中教授は将来のノーベル賞候補の筆頭となっている。
しかし、世紀の発明にまつわる不思議な因縁。
iPS細胞の可能性は増殖を繰り返し、これからも私たちにさまざまなニュースを与えてくれるのではないだろうか。
(写真=人の体細胞からできたiPS細胞)