開幕カードの阪神、次節の中日には勝ち越したが、そのあとの東京ヤクルト、DeNAに全敗。目下、巨人は4勝8敗で最下位だ。
「DeNAとの初戦ですよ。あの負け方は堪えたと思います。上原で試合を落としたわけですから」(プロ野球解説者)
上原浩治(43)がコールされたのは8回表のマウンドだった。同時点では2対1で巨人がリードしていた。球場の空気まで変えてしまう“カリスマ”の同日のピッチングは別人だった。打者6人と対戦し、被安打5、自責点3。4連打を浴び、そのまま試合も落としてしまった。連敗街道の始まりである。
「上原で試合を落とした後遺症が連敗を引き寄せたと言っても過言ではありません」(前出・同)
上原は公式戦の登板5試合目で”炎上”した。もっとも、一年を通して好調を維持できるプロ野球選手はいない。しかし、ネット裏の他球団スコアラーはこんな見方もしていた。
「40歳を過ぎたといっても、上原にはスプリットがある。ボールが指先から離れたときとホームベースを通過するときの速度がほとんど変わらない。数字では表れない凄味ですよ。問題なのは体力面です」
スコアラーの言う「体力面」とは、調整のこと。上原は3月上旬に巨人と契約したため、キャンプをやっていない。個人練習は続けていたが、野球は団体競技である。集団に入らなければ養えない実戦感覚があり、その調整ができていないとなれば、一年を戦う体力は養えないというのだ。
炎上した10日のピッチングを視察した各チームのスコアラーは「上原が本調子になるのは、もう暫く先」と判断したようだ。
巨人OBの一人がこう続ける。
「巨人は投打ともにベテラン選手が多い。スロースターターの傾向があり、また、いったんスランプにはまると脱出するまで長く時間を要するタイプばかり」
この指摘は意義深い。昨季、5月下旬から6月上旬にかけて、巨人は球団史上ワーストとなる13連敗を喫した。ペナントレース後半戦も猛チャージをかけたが、この歴史的連敗のダメージが大きく、クライマックスシリーズ進出を逃してしまった。当時を知る関係者の一人がこんな内幕も教えてくれた。
「連敗中はチームの雰囲気も悪く、選手全員が『何とかしなければ』と必死になっていました。でも、心のどこかで『オレたちはこんなところで終わらない。何とかなるさ』と思っていたのか、ちょっと他人事のような話ぶりでした」
「そのうちなんとか…」と思っているうちに、取り返しが付かないところまで沈んでしまったわけだ。この反省はフロントも受け止めている。「早く手を打つべきだった」とし、補強(途中トレード等)が必要なら迅速に対応すると改められている。
「6連敗、2カード続けて勝ち星ナシなので、フロントも慌て始めました。でも、それが言動に出たら、現場が動揺するので冷静さを演じていますが」(ベテラン記者)
また、フロントが深刻に受け止めているのはエース菅野と左腕田口にまだ勝ち星が付いていないこと。この2人が確実に勝ち星を積み上げていかなければ、優勝はない。両投手ともキャンプ、オープン戦では好調だっただけに、「配球パターンを読まれているのかも!?」と疑心暗鬼になっていた。
高橋監督たちの状況だが、上原が炎上した10日の試合後、「こんな日もあるから」(斎藤コーチ)といった口ぶりだった。首脳陣が慌てたら、選手が動揺する。深刻に受け止めていたとしても顔に出さない努力はしなければならない。しかし、ここから連敗が始まったということは、高橋監督は「様子見」を決め込んだままなのだろう。指揮官が喝を入れなければ、開幕早々だが、今年の巨人は「ジ・エンド」となりそうだ。