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“アイドル”を卒業した17歳の女の子の本音(後編)

 自称宇宙初のエアギターアイドル「テレパシー」のメンバーである前嶋菜子(17)が2月11日、同グループを卒業。卒業の前日にインタビューに応じてくれた前嶋は、アイドルとして衝撃の発言をしていた。

 「私、アイドルさんが、あんまり好きじゃなかった」

 この発言の真意はこうだ。そもそも、「女の子、女の子しているのが苦手で…」だと語る前嶋。彼女の想像するアイドルは、そんな苦手なイメージであり、学校のクラスでも、男子生徒の前と女子生徒の前で対応が変わる、いわゆる“ぶりっ子”タイプの同級生は、「正直、好きじゃなかったです…。ごめんなさい(笑)」とのこと。弟が2人いる彼女は、「結構、男っぽく育ってきました。根は男っぽいんです」と自身を分析する。

 では、そんな彼女がなぜ、アイドルグループへ加入したのか。そもそも、モデル志望であったが、ステージでの激しいパフォーマンスが特徴であった「テレパシー」は、「アイドルの枠にはまらないアイドル」だと感じ、今後の芸能活動のきっかけになればとオーディションを受ける。合格し、活動がはじまると、歌ってダンスができるライブは本当に楽しかったという。「ダンスは、キレキレで皆様を魅了できるんです」というテレパシーのダンスが大好きで、ステージを応援してくれるファンを、“大切な存在”と感じるようになった。

 しかし、「アイドルの枠にはまらないアイドル」といえども、アイドルはアイドル。彼女は、握手会などでのアピールの仕方に苦労する。アイドルとしてファンから求められている偶像が、あまりに、本来の根が男っぽい自分と違うことに悩んだ。さらに、グループの体制にも変化が起きた。最初は、振りつけの先生がレッスンまで面倒を見てくれていたが、2013年9月頃から振り入れの後はメンバーだけでレッスンすることになり、定期的に週に2回あったレッスンは不定期になった。そして、スタッフの数も少なくなる。運営側としてはメンバーの自主性を育てようと考えての措置であったが、「体制が変わって、スタッフさんも少なくなってしまって。なんかほっとかれているみたいで…」と前嶋は当時を振り返る。

 さらに、ファンの数が減っていくことにも悩まされた。「メンバーのスキルは間違いなくあがっているのに、ファンの方が少なくなっていって…。メンバーでも飽きられないように、色々話し合って…。あと、私ももう少し、アイドルらしさを強く意識しなければいけないのかなって」と考えるようになった。「やっぱり、私はアイドルに向いていないのでは?」と感じつつも、このグループが変化していく中で、ここまで頑張ってきたテレパシーを、なんとかより良いものにという思いだけで精一杯であった。

 そんな様々な悩みを抱えながら、テレパシーの1周年記念ライブが近づき、「そのライブまで、なんとか頑張ろう」とメンバー同士で結束。1周年記念ライブは納得できるステージを、披露することができた。しかし、ひとつの区切りを迎えたことで、再び真剣に自分を見つめ直すことになる。そこで、改めて自分が目指したいのは、“アイドル”ではなく、“モデル”であることを確認し、グループからの卒業を決意した。他のメンバーには、1月12日にスタッフから伝えられた。ファンに報告したのは翌日のライブ。会場は静まりかえり、その後の握手会では、ファンから「辞めないでよ」と声を掛けられるも、返す言葉が見つからなかった。自分で決めたことなのに、悲しくなり、言葉が見つからなかったという。

 様々な事情があったにせよ、やはり、前嶋の卒業の大きな理由は、自身がアイドルに不向きであると感じていたことであり、そのことが、モデル・女優業への挑戦のスピードを早めたのだろう。「もし、卒業後に某国民的アイドルグループのセンターにするから、もう一度アイドルをやってみないと誘われたらどうする?」と聞いてみても、苦笑いしながら、「それでも、やらないと思います」と答えた。しかし、「もし、テレパシーのオーディションを知った時の自分にアドバイスができるなら、受けない方がいいと言う?」との質問には、「この経験はすっごく、自分が成長することができました。それに、すっごくいいメンバーにも恵まれました。なので、“絶対、受けた方がいいよ”とアドバイスをします」と力強く語った。矛盾にも聞こえるかもしれないが、これが17歳の女の子・前嶋菜子の率直な本音であるようだ。

 取材の中で、アイドルとして活動を続けていた前嶋菜子は、様々な葛藤を抱え、多くの矛盾に悩んだことを感じた。ただ、今回の取材で、「ステージでファンに向けて語りかけたアイドルとしての前嶋菜子」と、「舞台裏での17歳の女の子である前嶋菜子」、そのどちらも、まったく同じように答えていたことがある。それは、「メンバーとファンへの感謝」の気持ちだ。最後にステージで、たくさんの涙を流した彼女に、「その涙はどんな涙?」と質問すると、「ありがとうの涙です」と答えた。そう語った彼女の潤んだ瞳は、力強くもあった。(了)

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