日本プロ野球界で初めて監督をする和製メジャーリーガーは誰か。
たびたび名前が挙がるのは、イチローだ。日本の2連覇で幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)直後にも「巨人・イチロー監督」との報道が出た。
イチロー巨人監督のウワサは2006年、第1回WBCの東京ラウンド前のパーティーで、巨人の渡辺恒雄球団会長による「将来、巨人の監督をやってほしい」というラブコールが発端だ。
当時は東京ラウンドを主催する読売グループのトップとしてのリップサービスの意味合いが強かったが、昨季オフに周囲の状況は一変した。
「ヤンキースで活躍したら、将来、松井(秀喜、ヤンキース)は巨人に戻り、監督をやればいい」。長嶋茂雄終身名誉監督はじめ、巨人OBは松井秀の復帰を心待ちにした。
だが、原辰徳監督の後輩、東海大相模高校・大田泰示がドラフト1位で入団すると、巨人は松井秀が背負ってきた55番を与えたのだ。
「大田が活躍してから、松井秀の後継者として背番号55を与えるならわかる。まだ海の物とも山の物ともわからないルーキーに、いきなり55をやるというのは、松井秀に『もう巨人に戻ってこなくていい』と言うことと同じ」。松井秀の周囲から怒りの声が噴出した。
松井秀自身も「巨人に戻ると言っても、背番号がないのでは戻れない」と強烈なひと言を放っている。松井秀は巨人復帰できなければ、将来的な監督の目も消える。
むしろ渡辺会長のお気に入り、イチロー監督が誕生する可能性の方が現実的だ。イチローも今年36歳、引退後の人生設計も考えているはずで、巨人監督という道も頭で思い描いているかもしれない。
巨人の監督については、WBCで日本を連覇に導いた実績から原監督の長期政権が続くものと見られている。現在、巨人は投打ともに絶好調で首位をがっちりキープ。リーグ3連覇なら、原監督続投は間違いないだろう。
問題は、いずれは退く原監督の次なる監督。主だった人物は見当たらないが、野球ジャーナリストは語る。「一時期、ウワサになった星野(仙一)氏は、北京五輪の惨敗でミソをつけた。渡辺会長は『星野巨人』をあきらめていないだろうが難しい。原監督の後は、桑田氏というのが規定路線だろう」
原監督の後任には桑田氏の投入が濃厚。仮に原監督が今シーズンの優勝を逃せば、早期実現さえあるという。野球専門誌記者は「桑田に対する首脳陣の評価は高い。ファンのハートもつかめるだろうし、日米で苦労した経験もある。ち密な野球が期待できる」と話す。
桑田は4月から早大大学院「スポーツ科学研究所」に入学。修士課程は1年制で来シーズンの巨人への“就職”は問題ない。スポーツ科学の修士号を持つインテリ監督として、和製メジャーリーガー監督の第1号になっても不思議はないのだ。
日本人メジャーリーガーの草分け的存在である野茂英雄もメジャー出身監督の最有力候補だ。
大リーグ出身日本人監督としても草分けになれるか。昨年7月に現役を退いた野茂は、第2回WBCの監督やコーチの候補としても名前が浮上した。
近鉄(現オリックス・バッファローズ)時代には、鈴木啓示監督との確執がささやかれ、それが大リーグ挑戦への引き金となったともいわれる。当時は「日本球界の裏切り者」とも称された。もはや日本球界への復帰はないものと見られていたが、今年、オリックスのテクニカル・アドバイザーに就任。保留していた名球会へ正式に入会するなど監督就任への地固めを進めている。
寡黙で監督には不向きとの意見もあるが、昨年のオリックス、秋季キャンプで野茂が臨時コーチに就任した際、大石現監督は「口数は少ないが、教える時は違う。野球理論も話せる。熱心で分かりやすかった」と評している。
オリックス監督就任は案外、早期に実現するかもしれない。