3月29日、開幕戦延長10回の裏、目の前で二人の打者が申告敬遠により歩かされ、満塁で迎えた最終打席、グランドスラムをぶっ放し、痛快なまでに開幕戦に決着をつけた。
試合後、お立ち台の上で日ハム・中田翔の口から発せられたこの言葉を聞いてから、約4か月が経とうとしている。
オールスター明け、首位ソフトバンクとの3連戦の合計は僅に1安打。中断前のロッテとのゲームでは2本塁打を放ち、後半戦への期待を膨らませていたものの、未だに快音は鳴らされていない。あの開幕戦での雄姿から今シーズンの飛躍を思わせながらも、7月も中旬を過ぎようとする現在、「らしい」成績に落ち着いている気がする。
個人成績を見ると、ここまで打点がリーグ6位の60打点と、チームの主軸としてはまずまずの数字を叩き出している。但し、本塁打19本はどちらかと言えば物足りず、また、得点圏打率が1割台(.198)、さらに、左右の投手に対する成績も、左投手に対しての打率がこちらも1割台(.190)と(何れも7月18日現在)、「右のスラッガー」としては、いささか首を傾げたくなる内容だ。
それでもチームは、後半戦でいきなり首位を相手に3タテ。投打が噛み合い、接戦を物にするなど巻き返しへ向けて、これ以上ない内容でソフトバンクを敵地で叩いた。常々、「チームが勝てばいい」と口にする中田の言葉通り、連勝は何よりもチームに勢いをもたらす。
さらに、逆転優勝への重要なピースとして必要なのが、中田のこれまで以上の活躍だ。劇的な結末となった開幕戦や、中田の2本のアーチで連勝を4まで伸ばした前半戦7月ロッテ戦では、「(味方が)繋いでくれたから良いところで打てた」と語ったように、中田本来の持ち味といえばチャンスでの豪快の一発だ。
3月からこれまでの間、尻上がりに中田の打率は上向いてきている。2年ぶりに打点が3ケタに乗った昨年も、7・8月は何れも3割越えと打棒を振るったことも、今後への期待を一層、膨らませる。首位奪還に向け、波に乗ったファイターズをさらに加速させるため、チームの顔である「4番」の存在が何よりも重要となってくるのは言うまでもないだろう。
(佐藤文孝)