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日本一のスコアラーでもトドメをさせない広島のしぶとさ

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 それでも、緒方カープはしぶといと見るべきではないだろうか。セ・リーグは原巨人の独走態勢となりつつある。だが、巨人の球団ごとの対戦成績を見てみると、広島にだけは負け越している。巨人が83試合を消化した時点での対広島戦の成績は、4勝6敗1分け。もっとも、広島からみれば、首位巨人とのゲーム差は「12」。4連覇は非常に厳しくなってきた。

 「18−19年オフ、巨人はとにかく優勝することだけを考え、ポジションの重複も覚悟で戦力補強を続けていました。それと同時に取り組んできたのが、『対広島戦の対戦成績をどう改善させるか』でした」(球界関係者)

 広島から見た対巨人戦の過去5年間の成績は以下の通り。

2018年 17勝7敗1分け
 17年 18勝7敗
 16年 13勝12敗
 15年 15勝10敗
 14年 10勝13敗1分け

 巨人から見れば、対広島の勝ち越しはリーグ優勝を果たした14年までさかのぼる。「広島戦での負け越しと同時に優勝できなくなった」とも取れるので、原監督を始め、チーム関係者が戦力補強に躍起になったのも当然だろう。

 「12球団が『日本一』と認めるスコアラーを、“広島担当”に配置換えし、今季に臨みました。その配置換えを決めたのは原監督です」(前出・同)

 日本一のスコアラーとは、15年のプレミア12、第4回WBCで侍ジャパンを支えた志田宗大氏だ。青山学院大学からヤクルトスワローズ(当時)に入団した元プロ選手だ。プロ野球選手としては9年、通算320試合にしか出ていないが、現役引退後もヤクルトに残り、スコアラーの道に進んだ。

 「青学大の先輩である小久保裕紀代表監督(当時)が志田氏に侍ジャパンのスコアラーを要請しました」(ベテラン記者)

 外国の代表チームのデータをまとめるのは並大抵ではない。だが、データ収集の的確さ、そのデータをもとに解析する攻略法に、侍ジャパンのメンバーは圧倒されたという。

 おそらく、先輩・小久保は志田氏にデータ解析に関する高いスペックがあることを知っていたのだろう。

 「まとめ上げたデータをもとに攻略法まで提示してくれるスコアラーです。相手バッターの苦手、対戦投手のクセ、キャッチャーの配球の傾向まで分析してくれるんですが、その指示する言葉がシンプルで分かりやすい」(前出・関係者)

 17−18年オフ、巨人にスコアラーとして招かれた。岡本和真の覚醒は「志田スコアラーのおかげ」なる言葉も聞かれた。原監督はその志田スコアラーを“広島専属”とし、攻略に努めている。

 「広島バッテリーの配球を的中させたこともあります。一方で、今季、岡本がやや成績を落としているのは、志田スコアラーがベンチから外れたからだとも指摘されています」(前出・ベテラン記者)

 巨人は頼もしい味方を得たようである。しかし、同時に言えるのは、それでも広島はまだ巨人に勝ち越していること。各球団はデータ分析のため、メジャーリーグに倣って映像解析機やアナリストを加えているが、広島はさほど熱心ではない。本当に必要なら導入するという発想だ。

 マツダスタジアムでの両チームの対戦成績は、巨人の2勝3敗1分け。地方球場では1勝1敗。東京ドームでも1勝2敗と負け越している。7月19日、マツダスタジアムで広島対巨人3連戦が始まる。ここで志田スコアラーの分析が冴え渡って「巨人の3連勝」となれば、広島は本当にジ・エンドだ。ただ、連敗するようなことになったら、「データでは計り知れないしぶとさが、広島にはある」と警戒するのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)

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