◎生い立ち
小学生の頃、元世界ヘビー級王者マイク・タイソンの試合を見てボクシングのとりこになった。この時から将来の夢はプロボクサー。中学に入るとその思いはますます強くなった。当時は先輩の後輩イジメがはびこっており、佐藤も目をつけられた。袋叩きにされ、「強くなりたい。こいつらを見返してやろう」と決意。中学3年生の時、叔母さんが盛岡南高校ボクシング部の監督と知り合いだったこともあり、ボクシングを始めた。
その後、高校に入学するとメキメキと実力をつけ、高校3年生でインターハイ5位、国体3位の成績を残した。
その活躍が認められ大学に進学するも「プロになりたい」と一念発起。泣きながら反対する母親を押し切り大学を中退すると、当時憧れていた佐藤修(元WBAスーパーバンタム級王者)の所属している協栄ジムの門を叩いた。
◎現在
今は、ガソリンスタンドでバイトをしながらボクサーを続けている。上京した時から6年間、ずっと同じところでお世話になっている。だが、プロといっても現実は厳しい。「保証が無いんで、働かないと全然食っていけない」。
当面の目標は「最強後楽園 日本タイトル挑戦権獲得トーナメント決勝戦」(10月11日、東京・後楽園ホール)で優勝することだ。
相手は4年前に東日本新人王準決勝で敗れた“因縁の相手”杉田。4Rを戦い抜き、自分では勝利を確信していた。ところが判定は1-2。「これで負けるんか」とショックを隠しきれなかった。その後、杉田は日本タイトルに挑戦したが、佐藤は回り道を余儀なくされた。
それだけに「試合では負けたけど、実力では負けていない。同じ相手に2回負けたら立ち直れないほどのダメージを受けるんで。まずは打倒・杉田。恨みが募ってますから」と勝利を誓う。
◎今後
その先に見据えるのが「日本タイトルに挑戦すること」だ。このトーナメントで優勝すれば自動的にタイトルマッチ挑戦権を獲得できる。
佐藤は「日本チャンピオンになるビジョンはかなり見えてきている。25歳のうちに日本チャンピオンになりたい。そして28歳までに世界チャンピオンになれたら」とプランを明かす。
そのために現在はパンチ一発一発の打ち方や接近戦の練習でフィジカル強化を図っている。すべては「足を使った華麗なアウトボクシングの完成」のため。「華麗にさばいてカウンター。ここにボクシングの美学を感じます」と理想系を語る。
◎家族
そんな佐藤の支えとなっているのが家族の存在だ。現在は奥さんと2人の子供(2歳2カ月と4カ月)の4人で暮らしている。
ひとつ年下の奥さんとはバイト先で出会い、結婚して3年目。「テクニックはほとんど使わなかったっス。僕がガンガンいって、ゴリ押ししたんですけどね。恋は(ボクシングとは違って)インファイターなんです(笑)」だったとか。
守るものが出来てから「負けられないって気持ちは、子供が生まれるとなおさら強くなりましたね」と言う。家にいる時は子供をお風呂に入れたり、父親の仕事をきっちりこなす。ボクシングとの両立の秘けつは「楽しんでやること」で、「苦にはならないです。充実してるんで、時間が過ぎるのが早いですよね」と満面の笑みを見せた。
夢は子供をプロボクサーにすること。「上の子は優しぎるけど、下の子は強そうな気がする。まあ、本人次第ですけどね」と明かしてくれた。
今ノリに乗っている“みちのくのスピードスター”佐藤が、スターダムの階段を駆け上がっていく日は近い。
<プロフィール>
さとう・ようた 1984年4月1日生まれ。25歳。岩手県盛岡市出身。2児の父。171センチ、58キロ。B型。日本スーパーフライ級6位。趣味はスケボー。好きな芸能人のタイプは西山茉希。プロ戦績19戦16勝(8KO)2敗1分。アマ戦績32戦22勝(2KO・RSC)10敗。国体3位(バンタム級)。