2.5枚目と3枚目の定義はあいまいで、誰がどのジャンルに入るのか、意見は分かれるところだろう。仮に「純然たる2枚目と比べて締まらないところがある」という意味ではムロは2.5枚目、3枚目を「滑稽な役や道化役」と定義するなら小手が当てはまりそうだ。いずれにしろ「不細工」という意味はない。
ムロは『大恋愛』で戸田恵梨香演じるヒロインの恋の相手役を演じる。従来なら2枚目俳優がキャスティングされるメインのポジションを、時に情けなく、時にイケメン風に好演している。小手は主演の織田裕二のライバル役として脇を固め、アメリカ風のオーバーアクションでドラマを盛り上げる。ヒロインの相手役、ヒーローのライバル役とそれぞれ役柄は異なるが、それぞれ個性がさく裂している。
「前クールでは『高嶺の花』(日本テレビ系)で石原さとみの相手役を務めた峯田和伸が、“美女と野獣”コンビとして話題になりました。2枚目俳優をキャスティングするより、意外性が受けるんです」(芸能ライター)
確かに、絵に描いたような2枚目よりも親近感が持てて、「ひょっとしたら俺もこんないい女と……」「うちの旦那にもイケメンなとこがあるのかも」などと、視聴者も感情移入しやすいのかもしれない。
さらに、ムロと小手には共通点があると指摘する声もある。
「ともに苦労人で演劇経験が豊富。ムロは食えない小劇場演劇で鳴かず飛ばずの時期が長く、そのときすでにシリアスな役から3枚目の役までこなしている。小手も大学時代に演劇サークルに参加、その後、小さな劇団を主宰して演出家や作家も兼ね、やはり幅広い役柄をこなしてきた。2人ともスター然としている役者より親近感が持てますし、演技力もしっかりしているんです」(スポーツ紙芸能記者)
『下町ロケット』(TBS系)の阿部寛は2枚目から3枚目まで幅広くこなせる俳優として知られる。堤真一や高橋一生、長谷川博己らもそうだろう。2枚目だが親近感の持てる役どころもできる彼らの場合は、いわば天上から下界へときどき降りてきてくれる感じだろう。
それに対しムロや小手、あるいは峯田がもてはやされる流れは、下界にいるわれわれも天に上がれるチャンスがある、という希望を示しているのかもしれない。今年目立った新たな動きといえそうだ。実はイケメンな瞬間をのぞかせ、ドラマ全体に影響を及ぼすような圧倒的な存在感を放つ“彼ら”。そそられる人は少なくなさそうだ。