「渡米の目的はヤ軍に入団拒否を伝えるためと見て、まず間違いありません。本人が応札球団に直接頭を下げることで、悪いイメージを払拭したいと思っているんでしょう」(球界関係者)
中島のポスティングは“2年越しのお願い”でもあった。2010年オフは球団幹部に対し、ポスティングに掛けることを「約束した、しない」で口論にも発展。今回、ようやくメジャー挑戦への第一歩が踏み出せたわけだが、中島が応札球団・ヤ軍入りに難色を示した理由は、1つ。「内野の控え」という低評価に不満を抱いたからだ。
「破談の可能性は米メディアも一足先に伝えていました。『ジャイアンツ、パドレスなどが二遊間のレギュラー候補として評価している』との情報もあっただけに、中島も補欠扱いの評価にショックを隠せなかったようですね」(前出・同)
中島側は「西武球団に残留し、海外FA権を取得してから、メジャー30球団とフリーダムに交渉した方が得策」と判断したという。
もっとも、一部報道によれば、「野茂、イチロー、松井もレギュラーを約束されてメジャー挑戦したのではない」と、中島の判断そのものを否定する声もあったが…。
「それ以上に問題なのは、ヤ軍との交渉決裂後の中島の処遇ですよ」(前出・同)
どういう意味かと言うと、すでに西武球団は「中島が抜けた後」を想定したチーム作り(補強)を終えているからだ。中島の抜けたショートのポジションには、プロ4年目の浅村栄斗が入る。打撃力は中島の域には及ばないが、「守備範囲は中島よりもはるかに広い」(某選手)とのこと。また、渡辺久信監督は、片岡(易之)、栗山(巧)に「3番を獲れ!」の檄を年賀状に添えたという。攻守ともに中島が戻ってくるところはないというわけだ。
さらにまた、こんな情報も聞かれた。
「ドラフトで永江恭平(4位=海星高)を指名しました。永江は『投手兼遊撃手』でしたが、長崎県大会では150キロ近い真っ直ぐを投げていて、変化球の持ち球も多いタイプでした。スカウトのなかには『投手として育てたい』との声もあり、身体能力の高い高校生です。西武サンは内野手としてじっくり育てるつもりで指名したそうです」(ライバル球団スコアラー)
西武は基本的に「モメる選手」を嫌う。契約更改がとくにそうで、年越し交渉、調停、法廷論争を指して、「世間的な自分の評価を落としていることが分からないのか?」と厳しい見方をする。ある意味、走攻守3拍子揃った中島を見限ったのも、そのためだろう。
米メディア陣の1人がこう言う。
「ヤ軍との交渉決裂の可能性は否定できません。しかし、内野手が不足しているメジャー球団もあります。中島の渡米目的はトレードに関する付帯事項を増やし、トレードを前提とした契約を交わすためではないかとの見方も、こちらでは急浮上してきました」
代理人のグレッグ・ゲンスキー氏は大物投手・サバシア(ヤ軍)も抱える一流の交渉人である。ヤ軍は応札金250万ドルの元手が回収できるのなら、「トレード前提の入団交渉にも応じる」(同)との見方もある。中島は敏腕代理人に古巣に帰れない事情も改めて伝えるべきだろう。