キャンプ序盤、埼玉西武ライオンズにニューフェイスが現れた。3年目の浅村栄斗内野手(20)の評判が良い。順調に行けば、内野のレギュラー争いにも食い込んできそうだが、中島裕之内野手(28)はそんな後輩のガンバリを複雑な思いで見ているのではないだろうか。
「西武キャンプの話題は新人の大石に集中していますが、中島が抜けた後を想定し、どんな守備陣営になるのかも今年のキャンプの見どころでした。浅村は評判通りだね」(プロ野球解説者の1人)
浅村は昨季、一軍で30試合に出場。本塁打2、打点9と成績はイマイチだったが、中島がメジャー挑戦した後の「正遊撃手」の最有力候補と目されてきた。他球団の二軍コーチも「ルーキーイヤーは守備でミスもあったけど、2年目の去年は守備も上手になったし、打球も速い」と、一目置いていた。
「走塁能力は一軍レベルにある」(前出・プロ野球解説者)とのことで、出場機会もかなり増えそうである。
「中島のメジャー志望は有名でした。この浅村、一昨年のドラフトで美沢(将=23/2年目)を指名したのも、中島が抜けることを想定してのことでしょう」(前出・同)
昨年オフ、西武は中島をポスティング・システムに掛けるか否かで大モメした。
関係者によれば、中島のメジャー挑戦志望は突発的なものではなく、数年前から契約更改の席上で相談していたという。そして、昨季、「周囲も納得するような成績(個人)を残せば」なる条件で、ゴーサインが出されたそうだ。しかし、球団は「そんな約束はしていない」と言わんばかりだった。最終的には中島が諦める形になったが、前出の関係者は「球団の方針が一転した」と、同情を寄せていた。
「球団がゴーサインを出していたと聞いています。『言った、言わない』の水掛け論はしたくないが、チームがペナントレース終盤で優勝を逃し、状況も変わったんでしょう。中島をポスティング・システムに掛け、球団に入って来る『落札金』と、1年残留してもらったときに入ってくるお金(グッズ収益など)、戦力的な事情を考え、慰留という結論に一転したようです」(同)
同じく、ポスティング・システムでツインズ入りした西岡剛(26)にしても、いまだ「日本人にショートストップが務まるのか?」なる米球界側の疑問が尽きない。「日本人の身体能力面での不安」は、元千葉ロッテ監督のボビー・バレンタイン氏も指摘していた。中島が買いたたかれるのであれば、「3割、20本、90打点」の計算も立つ中島を残した方が得策と、西武は判断したのだろう。
「ポスティング・システムは海外FA権を取得していない選手のための権利でもありますが、近年では『球団の権利』という解釈の方が強まっています。現行ルールで、FA権によって選手が海外チームに移籍した場合、日本の旧在籍チームは『補填金』も『人的補償』も得られません。従って、海外FA権で主力選手に出ていかれるのなら、その前に売ってしまおうという発想の方が強くなってきました」(前出・プロ野球解説者)
浅村もいきなり中島レベルの成績は残せないはず。首脳陣も「中島退団後」に不安があったから、フロントとともに慰留に乗り出したのだろう。しかし、「盗塁王・片岡(易之=28)にも引けを取らない走塁センス」は、新しい息吹を感じさせてくれる。浅村の評判が高まれば高まるほど、「だったら、オレを気持ちよく送り出してくれればいいものを!」というのが、中島のホンネではないだろうか。