横浜の監督交代劇があった直後に始まった交流戦2カード目の5月24、25日に横浜球場で注目の対戦をした際に「弱いチームの監督は大変だぞ」と横浜・田代監督代行に声を掛けた野村監督。今度は6月13日から仙台で横浜との2連戦が行われる。また何かと話題を呼びそうだが、実は水面下で衝撃的な事件が起こっていた。横浜の監督交代劇の直後だった。
「驚いたぞ。横浜の選手が早速電話をしてきおった」。野村監督は番記者たちにこう漏らしたという。大矢監督の電撃的な休養、田代二軍監督の監督代行就任という横浜の監督人事発表と同時に、スポーツ紙に来季の横浜監督の有力候補として名前が挙がり、注目されている野村監督。そこへ横浜の主力選手から電話があったというのだから、野村監督本人が驚いたのも当然だろう。
「誰だかわかるか」と番記者に問いかけ、正解を即答されて「なんでわかったんや」と再び仰天したというオチまで付いている。横浜OBの1人がこう苦笑する。
「それはわかるだろう。そんなことをする主力選手は一人しかいない。鈴木、石井(現広島)らがクビを切られる球団の若返り方針の中で、アイツだけはフロント首脳、監督にゴマをすってここまで生き延びてきたんだからね。ノムさんはそんなことも知らないのか」と。
が、野村監督は古狸だ。あえてこの隠密裏のラブコールを明かしたのは、楽天フロント首脳への強烈なけん制球だ。横浜の来季監督就任情報は単なるウワサではなく、横浜の主力選手が密かにラブコールを送ってくるほど信憑性があるのだと、アピールしたいのだ。だからこそ、番記者に打ち明け話をして楽天フロント首脳の耳に入るようにし向けたのだ。
「優勝して球団を困らせてやる」と公言している野村監督だが、実際にはそこまでの自信はないだろう。なんとか3位までに入り、クライマックスシリーズの出場権を獲得、来季続投したいのが本音だ。そのためには、来季横浜監督就任情報を切り札にして楽天ファンからの続投待望論を高めたいところだろう。「横浜へ行って一からやり直す苦労をするよりも岩隈、田中という12球団一の二本柱がいる楽天で続投した方がメリットははるかに大きいからね」と球界OBが指摘する通りだ。
ユニホームを着ながら次から次へと本を出しまくって、ベストセラー作家並みの野村監督の最新作は、「進化する名将、野村哲学の集大成!」というサブタイトルのついた『勝利への執着力 野村主義』。この宣伝文句の中に「ユニフォームを着ていなければ、伝えられないことがある」という興味津々の言葉がある。来季もユニホームを脱ぐ気がないことを改めてアピールする本音が込められているのだ。『勝利への執着力』ではなく、お金になる『ユニホームへの執着力』だろう。
「マネージャーはサッチーや」という商売人の野村夫妻にすれば、楽天監督続投がベストで、横浜監督は次善の策だろう。さて、楽天球団が野村監督のリーク作戦にどう反応するか、今後の綱引きが一段と面白くなってきた。