新任の仕事はどういうものなのか。「ジャイアンツアカデミーで裾野拡大のための助言をする」というのだが、「巨人球団代表補佐」という肩書きと比較すれば、左遷のように受け止められても仕方ないだろう。「ここまでよく読売が面倒を見てましたよ。一茂は感謝しないといけない」。こう言い切るのは、父・茂雄氏と近い巨人関係者だ。
どういうことなのか。具体的に解説してもらうと、こうなる。
「一茂が球団代表補佐などという要職の肩書きをもらえたのは、ミスターが脳梗塞で倒れるというアクシデントがあったからだ。当初のリハビリ中は、しゃべることもままならなかったから、ナベツネさん(渡辺恒雄・読売グループ東京本社会長、巨人球団会長)とすれば、ミスターの名代として必要だったし、長嶋家の家計を助けるためにもそれなりの金銭的援助が出来るポストを作ったのだろう。ミスターが出席しなければいけない会合などに代理人として出るには、長男の一茂が最適だったからね。それに、ミスターの病状、回復具合を知るためにも、一茂からの最新情報が欲しかった。でも、今はミスターがすっかり元気になったから、もう一茂は不要になった。ただいきなり巨人退団となると、週刊誌などに騒がれるので、野球振興アドバイザーなどという、どうにでも取れるポストを新設したのだろう。事実上の解雇通告でしょう」
現在は長嶋氏が元気になったから冷静に振り返ることができるようになったが、アテネ五輪本番を前にして起こったアクシデント、誰もが予期しなかった長嶋氏の脳梗塞は当時、日本国中を震撼させた。一時は生命の危機にも直面。本人が最近になって親しい球界関係者に「倒れた瞬間は、もうダメだ、死んだと思った」と告白しているほどの状態で、日本国が騒然となった。
その後は血のにじむようなリハビリを続け、奇跡的な回復。側近が「あとは右腕のマヒだけ。これさえもう少しよくなれば、なんの問題もない」と漏らしている。
実際に、昨年後半には初めて一泊で遠出もしているという。これまで巨人宮崎キャンプ視察も日帰りするだけだっただけに、完全復活と言ってもいい。前出の側近は今年のキャンプ視察を楽しみにしている。
「例年通りに宮崎に行くのか。それとも巨人はキャンプ後半、初めて沖縄・那覇に行くので、どうするのかな。沖縄へ行けば、名護で日本ハム・斎藤を見られる。那覇から名護は遠いといっても一泊すればなんの問題もないからね」と語る。
長嶋氏は、早大時代から斎藤佑樹に注目しており、昨年8月、横浜球場で行われた世界大学選手権を視察している。米国戦で登板した日本代表・斎藤を生で見るためだった。この時はネット裏の部屋から見守っただけだが、沖縄・名護キャンプ視察となれば、初めてのツーショット実現と大騒ぎになるだろう。
読売、巨人サイド、長嶋氏双方にとって、もう代理人・一茂氏が必要でなくなっているのは、まぎれもない事実だ。
「それだけではない。一茂が起こした数々のトラブルは致命傷になっている」と指摘する巨人OBがいる。確かに、球団代表補佐になった当座の一茂氏は有頂天。大まじめで球団改革を唱え、現場介入の発言までして、当時の堀内恒夫監督を激怒させている。「アイツはいったい何様のつもりなんだ。親の七光りだけなのに」と。
さらに、ひどかったのは、長嶋氏のトロフィーなど栄光の記念品を売り払った事実、長嶋氏と古くから付き合いのある友人、知人たちへの金銭要求疑惑などの発覚だ。怒り狂った長嶋氏はこう事実上の縁切り上まで出している。
「今後、長嶋茂雄に関する仕事はいっさい『オフィスエヌ』が窓口になります。『長嶋企画』は関係ありません」と。『オフィスエヌ』は亜希子夫人が社長を務め、亡くなった後は二女の三奈さんが受け継いでいる長嶋茂雄氏の個人事務所で、『長嶋企画』の方は、一茂氏の事務所だ。グレーゾーンがあったことが、一茂氏の増長を生んだ原因だと、長嶋氏が改めて明白な区別を世間に宣言したのだ。
「長男だし、いずれミスターの財産は受け継ぐのに、なんであんなに一茂は焦っているんだ」と、巨人OBたちも一茂氏の勇み足に苦々しい思いを隠せないでいたので、長嶋氏の『オフィスエヌ』と『長嶋企画』のケジメをつけるクリーン宣言を全面支援している。
そんな経緯があるだけに、今回の巨人の人事に関してもこう明言する。「一茂は自業自得だろう。野球振興アドバイザーという肩書きをもらっただけでも御の字だ。改めて父親離れが必要だろう」
いつまでも親の七光りに頼れるものでないことを改めて自覚しないと、誰からも相手にされなくなる。