「安楽智大投手(済美)に対し、かなり熱心な視察を続けていました。現時点で見て、高校生投手で1位指名される可能性が高いのは(入札)、安楽、高橋光成(前橋育英)、松本裕樹(盛岡大付)の3人。昨夏の甲子園優勝投手でもある高橋は、今年は春も夏も甲子園に出ていませんが、『18-U日本代表』ではエースとして好投し、かつ練習試合でも大学生をキリキリ舞いさせています。どのチームも、高橋、安楽で一番人気を争っている状態」(在京球団スカウト)
安楽の評価だが、巨人以外にも、日本ハム、阪神、DeNAなどが熱心に追い掛けてきたという。
安楽は右肘を故障した。今夏、復活マウンドに上がったが、昨春の甲子園大会で772球を投げて以降、精彩を欠いている。悲観的な見方をする甲子園ファンも少なくないが、今も12球団の「1位候補リスト」から消えていないのである。プロのスカウト陣が故障の後遺症を払拭できない安楽を高評価する理由は、「エースの風格を兼ね備えた逸材」(前出・同)だからだという。
こうした安楽への評価を踏まえた上で考えると、大学生投手(=即戦力)の1位指名を優先に考え始めた巨人は、“特殊なドラフト”に臨むとも見ていいだろう。
「巨人の外れ1位と目されているのが、野手です。高校生、大学生の両方に候補がいるようですね」(ライバル球団職員)
高校生の候補は、岡本和真(智弁学園)。大学生は「無名中の無名」と言っていいだろう。中部学院大の野間峻祥である。野間は俊足強肩の外野手。打撃センスは「トップレベル」とのことだが、東海地区大学野球連盟の岐阜県リーグで戦っており、データは“地方の成績のみ”となる。中央と地方のレベル差はなくなりつつあるが、大学野球の代表にも招集されたこともないため、野間の外れ1位情報にはちょっと驚きである。
巨人と野間の“接点”はあった。去る8月24日、東海地区大学野球連盟・選抜チームとプロ・アマ交流戦を行っている。野間は「4番中堅」で出場し、2安打を放っている。
「その2安打は三塁打と二塁打。打撃センスはスカウトの報告通りでした。三塁を果敢に奪う積極的な姿勢、四球後の盗塁を見て、脚力もプロで通用すると判断したようです」(前出・在京スカウト)
岡本の打撃センスは甲子園大会でも証明済み。今年のセンバツ大会では「1試合2本」のアーチを放つなど、天性のホームランバッターの素質を持っている。
野間、岡本はタイプが異なる。野間は俊足の左バッター、岡本は右の長距離砲だ。昨年のドラフト会議では捕手・小林誠司を1位指名した。石川歩(現千葉ロッテ)の抽選に失敗したとはいえ、2年連続での野手指名になれば、内海、杉内の年齢的衰えによる先発スタッフのレベルダウンを補えない。岡本は守備に難があり、「プロでは一塁しか守れない」と評するスカウトもいた。
「投手が打席に立つセ・リーグは犠打のサインが細かく、一塁手の守備を重要視します」(プロ野球解説者)
10月のスカウト会議で、巨人は1位候補リストの筆頭に早大・有原航平投手を挙げたとの情報も交錯している。有原も今年に入ってから右筋の違和感を訴えており、変化球主体の不本意なピッチングが続いている。
そんな有原に対し、「変化球でアウトが取れる投球術もある」「これだけ投げられれば…」と改めて高評価をするスカウトと、「球速は戻りつつあるが、もう少し様子を見たい」と慎重論を促すチームもあった(9月28日秋季リーグ戦 対明大)。
翌日のスポーツ新聞を見ると、巨人担当スカウトは高評価した側だが…。
本命は故障を抱え、外れ1位は左のスピードプレーヤーか、右の長距離砲。最終決断は10月23日の当日午前中にくだされるが、これだけ違うタイプの選手が挙がるとは、1位候補の絞り込みに苦戦しているのではないだろうか。