「9月23日の東京ヤクルト戦(神宮)は、今年の広島を象徴する試合でした。先発のヒースが好投し、ロサリオがダメ押しのアーチを放って…。投打の外国人選手が揃って活躍しました」(プロ野球解説者)
ドミニカ共和国のカープアカデミーで育てたロサリオが活躍し、途中獲得したヒースが好投。ドラフト指名で集めた生え抜きの野手陣がハツラツとしたプレーを見せてくれた。
育成、編成、渉外。球団組織が機能し、チームを強くしていく。
一般論として、プロ野球チームの監督、コーチはシーズン途中での外国人補強をあまり好まない。変化球の多い日本の野球スタイルに適応できるかどうか、分からないからだ。他球団に在籍した外国人選手と再契約するチームがなくならないのも、「爆発的な活躍は期待できないが、確実な計算(成績)が立つ」からである。
爆発的な活躍−−。日本球界未経験の外国選手が打つと、チームは勢いづく。広島はライネル・ロサリオ(25)の扱いが難しくなるのではないだろうか。
広島の渉外担当も優秀なのだろう。
しかし、ロサリオの経歴は他の広島在籍の外国人選手と異なる。ドミニカ共和国の野球学校・カープアカデミーの出身なのは既報通りだが、“入学当時”のことはあまり知られていない。
ロサリオはカープアカデミーに入学するきっかけは、カージナルス2Aを解雇されたからだった。行き場を失い、「他に選択肢がなかった」という。
「メジャーリーグ28球団がドミニカ共和国で野球学校を運営しています。近年、メジャー球団のアカデミーは資金力にモノを言わせ、有望な人材を確保していました。カープアカデミーはその過当競争で厳しい局面に立たされていたと聞いています」(球界関係者)
メジャー各球団が人材育成に巨額金を投入しているのも有名な話。有望な人材には“支度金”が用意されるともいう。支度金が出る方と出ない方のどちらに入学するかは、聞くまでもないだろう。支度金を得たエリートはマイナーリーグを経て、メジャーリーグに昇格していく。エリートの全員が活躍しているとは言い切れないが、昇格の実績が多ければ多いほど、自分たちのアカデミーの宣伝にもなる。将来のメジャーリーガーを夢見る若者たちも自ずと集まってくるというわけだ。
「2012年、カープアカデミーは選手が4人しかいなかった。13年は15人ほどの投手候補が入学し、学んでいましたが」(前出・同)
2Aを解雇された無名選手が日本で活躍している−−。無名だったロサリオの活躍は現地で衝撃を与えたそうだ。ロサリオの出現はカープアカデミーの経営的危機も救ったのである。
「ロサリオのことは現地でも伝えられています。ロサリオの出場機会が増えれば、カープアカデミーへの入学を希望する若者も増えていきます」(同)
広島は“余剰戦力”が増えることを嫌う。一軍登録できる外国人選手は「4人まで」。バリントン、ミコライオ、フィリップス、キラ、エルドレッド、ヒース。ロサリオを含めた7人をどう使い分けていくのか…。
「広島が所属外国人を手放すのなら、他球団が放っておきませんよ」(在京球団職員)
ライバル球団に優良外国人選手をくれてやるようなものだ。
エース前田の退団に備えた先発投手の補強も急務だ。今秋のドラフト会議で“即戦力投手”の指名に失敗した場合、大物メジャー投手の獲得に動くとの情報も交錯している。