「先発2番手のホランドが事故でチームを離れ(前半戦)、先発スタッフのレベルダウンは予想されていました。チームの勝ち頭になるはずだったダルビッシュも故障でリタイアしてしまい、戦況はますます苦しくなりました。ダルビッシュ自身、故障で後半戦を棒に振った悔しさもあるでしょうし、レギュラー捕手と呼吸が合わず、辛いことばかり」(現地特派記者)
これまでダルビッシュの投球をもっとも多く受けてきたジョバニー・ソト捕手が、シーズン途中、アスレチックスにトレード放出された。ダルビッシュは捕手との相性に左右されやすいタイプとも伝えられている。
“恋女房”だったソトは故障が重なり、今季前半戦は10数試合しか出ていない。ダルビッシュの不振がその影響だとしたら、『トレード』はまさにチームを左右させるものと言えそうだ。
今季、レンジャーズを巻き込んだ“スキャンダル・トレード”があった。
プリンス・フィルダーとイアン・キンズラーの大型交換トレードが成立したのは、昨年11月だった。
プリンス・フィルダーは阪神に在籍したセシル・フィルダーの息子としても日本で紹介されている。本塁打王1回、打点王1回、シルバースラッガー賞3回、ハング・アーロン賞1回…。年俸2400万ドル(約24億円)を稼ぐメジャー屈指のスラッガーであり、長年、デトロイトタイガースの打線の中核を務めてきた。その好打者がレンジャーズにトレードされた理由は「心機一転」だった。
「昨年5月、本塁打の量産ペースが落ち、打率成績も振るいませんでした。チーム首脳陣が原因を調べたところ、離婚していたことが分かったんです」(米国人ライター)
離婚の理由は、夫人の浮気。しかも、相手はチームメイトのアビサイル・カブレラ(現ホワイトソックス)だというから、話がややこしくなった。タイガースの控室はヒソヒソ話が止まない。当然といえばそれまでだが、周囲が気遣えば気遣うほど、フィルダーは傷ついて行く。しかし、“アビサイルの兄貴分”が黙ってはいなかった。
「チーム全体のリーダー格でもあったミゲル・カブレラが怒ったんです。アビサイル・カブレラと取っ組み合いのケンカになり、ミゲル・カブレラは軽傷を負いました」(同)
この事態を重く見たGMは、アビサイル・カブレラをホワイトソックスに放出。彼は兄貴分のミゲル・カブレラとプレースタイルも似ており、師弟関係にあったという。
「2人の友情は『ジ・エンド』です。でも、ホワイトソックス移籍後(昨季後半戦)、アビサイル・カブレラは打撃好調で、残留したミゲル・カブレラは反対に不振に陥り、フィルダーも復活できず…」(同)
タイガースは環境を変えてやった方が「フィルダーのため」と判断し、トレードに踏み切った。フィルダー獲得に名乗りを上げたのはレンジャーズ。交換要員に選ばれたのが二塁手のイワン・キンズラーだった。キンズラーは『30-30』(本塁打30-盗塁30)で知られたスラッガーではある。
「キンズラーはレンジャーズのジョン・ダニエルズGMと折り合いが悪いと目されていました。キンズラーも名投手でレ軍球団社長、同CEOを務めたノーラン・ライアン氏を尊敬する1人でした。ライアン氏は昨年10月にレ軍を退団し、アストロズのエグゼクティブ・アドバイザーに転じました。その後、レ軍社長を就いたのはダニエルズGMです(社長兼GM)。キンズラーはダニエルズGMの陰謀でライアン氏が出て行ったと勘繰っています」(前出・特派記者)
その影響だろうか。キンズラーはシーズン前、「レ軍は0勝162敗すればいい」と発言。メジャーリーグは162試合制、「全敗しろ」というわけだ。
「キンズラーの発言をどう思う? 反論は?」
米記者団に囲まれたレンジャーズの元同僚たちは「この発言は、彼の本意ではないよ」と“大人の対応”を見せたが、タイガースの“内輪モメ”に巻き込まれたのも同然だ。
ミゲル・カブレラ 打率3割1分8厘 本塁打23 打点103
アビサイル・カブレラ 打率2割5分4厘 本塁打5 打点23
プリンス・フィルダー 打率2割4分7厘 本塁打3 打点18(出場試合数42)
*9月19日時点
フィルダーは故障もあってか、これまでの輝きを取り戻していない。アビサイル・カブレラも37試合にしか出ていない。昨季後半はアビサイル・カブレラの打撃好調にタイガース選手はやるせない気持ちだっただろうが、“正義の鉄拳制裁”に出たミゲル・カブレラが好成績なのがせめてもの救いだ。ダルビッシュの正捕手問題だけではない。レンジャーズの低迷には複雑な人間関係も影響していたのだ。