慈恵医大教授で、太田睡眠科学センター所長の千葉伸太郎氏によるレクチャーとトークセッションに続いて、野村氏が登壇。狂言師のコンディション維持について語った。「声帯を緊張させ、背筋を反響板にして声を出す」と言い、スピーカーでなく、直接ステージから響いてくるような発声法は、「どこから声が出ているかわからない」と言われることも。狂言で登場する笑いを実演し、さかんな拍手を浴びていた。
「気持ちが沈んでいても、次の日にケロリとしていたりするのは、よく笑っているせいかも。狂言をやっている人に長寿が多いのは、普段から鍛練したり、バランス感覚を意識しているからかもしれない」という健康の秘訣について、意外にも「ジムに通ったりはしない」と話す。その理由は、「下半身は鍛えるが、狂言の繊細な動きを保つために、上半身はストレッチなどで必要最小限の筋肉を保つようにしている。ジムに通うとジムの体になってしまうので」と明かした。
日ごろから健康を維持するために、「ウォーキングを心がけているけど、舞台や稽古では、すり足をしているので万歩計でカウントされない」と笑わせつつ、「どちらかと言うと菜食主義的な生活。舞台前はパワーを出さなければいけないので、バナナやうどんなど炭水化物を取るが、それ以外の時は、なるべく野菜とタンパク質を取るようにしている」と話した。
メインテーマの睡眠について、「体が資本なので、睡眠を取らないとパフォーマンスに影響が出る。6時間は取るようにしている」と語った。ここで、野村氏から仮眠の取り方について千葉氏に質問。千葉氏からは「昼過ぎは、どうしても眠くなってしまう。15時以降に眠ると夜の睡眠に影響するので、あまりリラックスしすぎず、コーヒーを飲んでからカフェインが効いてくるまでの15分くらいの仮眠が効果的」と回答があった。「6時間はちょっと少ない。すぐ寝られるのは、ちょっと足りていないということ」(千葉氏)と指摘されると、睡眠の改善を決意していた。
最後に、「人間、眠ることはある意味で仕事。起きている間のルーティンも大事だが、この機会に皆さんと一緒に睡眠を勉強していきたい。意識していない(睡眠の)時間を意識するのは哲学的ですね」と話して、イベントを締めくくった。