三重県県警高速隊の調べによると、栄勝さんは同日午前7時過ぎ、津市小舟の伊勢自動車道上り車線の路肩に止まった車内で、ぐったりと倒れているのを別な車の運転手に発見され病院に運ばれたが、死亡が確認された。死因はくも膜下出血によるものだった。
事故の状況から、栄勝さんが運転中に発作を起こして路肩に止めようとし、停車後に意識を失ったものと見られている。
「大変痛ましい事故です。ご家族の方の話によれば、血圧が高く名古屋市内の病院に通院していたようなので、脳疾患を指摘されていたのかもしれません。くも膜下出血は、3分の1の方が死亡し、3分の1の方が障害を残すといわれます。症状としては、脳の動脈にできた脳動脈瘤が破裂し、血液がくも膜と脳表の間にすごい勢いで広がる。出血は血圧と同じ圧で起こりますが、頭蓋内圧が血圧と同じになった時点で、それに耐えられないと一瞬のうちに呼吸が止まり、突然死となります。しかし、前もって脳ドックなどで早期に発見し、手術すれば助かることもあり、予防もできます」
こう説明するのは東京多摩総合医療センター頭頚部外科担当医だ。
くも膜下出血は、脳梗塞や脳出血など脳卒中の中で最も重要な疾患といわれている。理由は、脳卒中の中でも軽い発作を除き1割、約2万人のくも膜下患者がいるとされるものの、早期の脳外科手術で多くの人を助けられる。さらに脳ドックで頭部に動脈瘤が見つかれば、予防的な手術も可能になったからだ。
くも膜下出血の特徴は、激しい頭痛がある。この症状は100%起き、しかも3日から1週間ほど続く。人によっては寝込むほど酷い痛さに苦しむ。
患者のYさん(54)の体験はこうだ。
「突然、頭と目の奥を突き刺すような激痛に襲われ、その場にうずくまってしまった。いったい何が起こったのかと思いましたが、痛さもただならぬものがありました。食欲もなく、倒れて10日ほどだったでしょうか、目がおかしいことに気付きました。焦点が合わず、同時に瞼も垂れ下がってくるような気がしたのです。黒目も動かない。これはただ事ではないと…」
Yさんは近くの脳外科のある病院に入院、幸運にも一命を取りとめたが、遅れれば重篤な事態を招いたかもしれない。