テキサスの田舎町。デニソン家の次男グレン(新井康弘)は、ある日突然プライドの高い78歳の父ロン・デニソン(加藤健一)を介護施設に入れるか、入れないかの選択を迫られる。父を家から追いやるのは気が引ける上に、多額の費用に頭が痛い。しかし父の面倒を見ることに疲れ果てたグレンの妻クララ(西山水木)は、父の現状を訴えるためにシカゴに住む兄のフロイド(金尾哲夫)を呼び寄せるが…。
「自分の人生を生きたい。」という妻の訴えに、うろたえる夫。ロンだけに使われる木の皿は一人の誇り高き人間が、老いて家族のやっかい者となり家を負われる空しさを表している。拝金社会を象徴する老人施設のフォーサイス(土屋良太)、共に老いらくの夢を語るロンの友人サム(有福正志)、老いとは対照的に若き肉体をさらした下宿人のエド(小椋毅)。それぞれの立場の登場人物たちがロンの行く末を見守り、そして左右する。50年代風の衣装に身を包んだベッシー(山下裕子)やジェイニー(宇都美由樹)の陽気な女性たちがシリアスな場面に度々現れ、場を華やかに。ただ一人、最後まで祖父を思う孫娘のスーザン(加藤忍)が放つラストのひと事。これが強く胸につきささる。(コダイユキエ)
加藤健一事務所「木の皿」
9月8日(水)〜12(日) 下北沢 本多劇場
9月15日(水)京都府立府民ホール アルティ
10月16日(土)兵庫県立芸術文化センター・阪急中ホール
(加藤健一事務所 http://homepage2.nifty.com/katoken/)
写真…「木の皿」の一場面 左より…加藤忍 加藤健一 西山水木
(撮影:石川純)