テレビ、新聞など大手メディアのアマチュアスポーツ担当スタッフが高校野球を取材するフリーランスの記者、カメラマンにそんな電話を掛けている。
今秋のドラフト会議は「将来性」に重点を置くか、少数精鋭の指名にいずれかになると思われる。即戦力系の投手が少ないからだが、それに加えて、早々に進学を表明した有力高校生も多い。そのため、一軍戦力になるまで4年以上掛かるかもしれない“原石”の指名も起こり得る状況となってきた。
こうしたプロ野球各球団の動きを早々に察した大手メディアの取材力はさすがだが、地方大会で散った原石の写真、詳細な試合データがないのである。
高校野球の専門誌スタッフがこう言う。
「地方では有名かもしれませんが、指名リストにも残らない選手というが毎年出るんですよ。そういう選手の名前を出したり、簡単な特集記事は作ります。インタビューしたことはあっても、公式戦は見落としてしまうのも多くて…」
ドラフト会議本番が近づくにつれ、各社ともデータを集め、補う作業もすることになりそうだが、すでにスカウト部長が現地視察した“無名投手”もいた。
本格的に投手になってまだ2年弱、最速146キロをマークした右腕が茨城県にいた。つくば秀英高校の長井良太投手である。
「夏の甲子園予選一回戦に9球団20人強のスカウトが大挙してきました。巨人、中日はスカウト部長が足を運んでいます」(専門誌スタッフ)
巨人・山下哲治スカウト部長は「素材的に申し分なし」と評すれば、中日・中田宗男スカウト部長は「3位くらいまでに消えるだろう」と、上位指名候補であることを伝えた。
しかし、地元関係者によれば、オリックス、ソフトバンクのスカウトは長井投手の才能にかなり早い時期から気が付いていたと話す。
「オリックスは同校の塚原頌平投手(2010年)を指名しており、昨年も同校から野澤佑斗投手がソフトバンクに育成で指名されております。野澤も将来性に太鼓判を押された投手でしたが、目敏いスカウトは野澤を見ながらも、長井の素質にも気づいていたようです」(前出・専門誌記者)
長井投手は2回戦で散ったが、かなり早い時期から「プロ志望届を出す」と表明している。即戦力投手の宝庫とされる年であれば、育成枠だったかもしれない。同校の森田健文監督はまだ31歳だが4人のプロ投手を輩出しており(育成枠、大学・社会人経由も含む)、「この人に見込まれて投手に転向したのだから、間違いない」と話すスカウトもいた。
「広島・鈴木誠也の活躍が影響しています。鈴木の才能には12球団が気づいていました。でも、即戦力投手の獲れる2位で広島が指名し、他球団は地団駄を踏むしかなかった。素材として間違いないのなら、上位指名すべきとの空気も強まってきました」(在阪球団スカウト)
今秋のドラフト会議は、近年とは違う指名順位になりそうだ。(スポーツライター・飯山満)
※巨人山下スカウト部長、中日中田スカウト部長のコメントは共同通信等の配信記事から抜粋いたしました。