『KNOCK OUT×REBELS』
▽4日 東京・後楽園ホール
キックボクシング団体KNOCK OUTが、業務提携しているキックボクシング団体REBELSとのコラボ興行『KNOCK OUT×REBELS』を開催した。
山口元気プロデューサーは「今回は若手たちがベテランに立ち向かっていくのがテーマ」と説明していたが、本人が想像していた以上に若手選手が台頭した大会となった。
まず、“キューティー・ストライカー”ぱんちゃん璃奈は、J-GIRL王者のMIREYと対戦。前蹴りを中心にリーチを生かした攻撃で試合を優位に進めた。判定には持ち込まれたものの、圧倒的な差をつけてデビューから無傷の5連勝を飾った。
試合後、ぱんちゃんは「きょうはいい動きができた。チャンピオンを相手に差がつけられた。前蹴りは感覚が良かったので、相手のダメージは分かりました。きょうは落ち着いて試合ができたので楽しかったですね」と振り返った。
「これからは弱い選手と闘うことはないと思うんですけど、今のままじゃトップの選手に勝てない」とした上で、「やりたい選手はたくさんいますが、私が決めるより(山口)元気さんに決めてもらった方がいいと思う。きょうキッチリ勝てたので、逆に『ぱんちゃんとやりたい』と言われたらモチベーションが上がりますし、強い選手とやりたいですね」と前を見据えた。山口プロデューサーは「まだ経験不足なだけに、キャリアに見合ったライバルを作っていかなくてはならない」と強調。ライバル候補を探す方針を示した。
セミファイナルでは、橋本道場の“超新星”安本晴翔が、前回大会に続いて躍動した。ベテランの新人と対戦した安本は、1R、1分すぎからパンチのラッシュで、新人を3回続けてダウンさせてKO勝利。「足を痛めていたのでパンチでいった」という安本だったが、「作戦通りでした」とも話している。前回大会は最終ラウンドまで倒しきれなかったこともあり、今回は徹底して倒しに来ていたのは明白だった。「オレもスカッとしましたね!」と笑顔で語ると、パンチで勝つと予告していた橋本道場の“長男格”橋本悟のセコンドに向かった。山口プロデューサーは、安本の気持ちの変化と成長を感じたという。
メインイベントは橋本悟に、“クレイジー・ダイヤモンド”鈴木千裕が挑んだ一戦。悟が口に含んだ水を噴き上げると、千裕も天高く噴き上げて、場内は盛り上がる。千裕のセコンドには「弟のブレーンに徹する」と話していた兄、宙樹の姿があった。試合は、序盤から千裕がパンチを見せ、最後はジャブ、ワンツー、フックのラッシュ。わずか1R45秒で千裕がKO勝ち。橋本に何もさせないままのKO劇に会場はざわめきがしばらくやまなかった。
会場で試合を見ていた日菜太も、山口プロデューサーも「勝つならアレしかなかった。長期戦になったら、橋本選手が有利になったと思う」と話していたが、本人は「倒すまで打ち続けるスタミナはあった。倒し屋ブラザーズは倒さないといけない。有言実行を果たすことができてうれしい」と安心した表情。「悟さんのオーラとか背負っているものは感じることが出来ました」と、対戦した橋本に敬意を表していた。リングに上がる前から勝利は確信していたようで、兄、宙樹の声もよく聞こえていたとのことだ。
試合後にはREBELSのチャンピオンである丹羽圭介との対戦を訴えていたが、「僕はわがままなんで、REBELSとKNOCK OUT両方のチャンピオンになりたい。REBELSがまだというならKNOCK OUTでトーナメントを開催してほしい」と要求。「早く誰もが納得する試合をしてチャンピオンになる」というのが、直近の目標だそうだ。
大会コンセプト通りのエンディングを演出したニューヒーローは、大会終了後、さっそくファンに囲まれていた。ここからスターになれるかどうかは本人次第。沖縄から久々に参戦した仲山大雅や、名古屋の大崎孔稀、敗れはしたがインパクトを残した濱田巧と、若い力が台頭した大会だった。
山口プロデューサーは「育成には2年はかかりますが、2年後はすごいんじゃないでしょか。若手のレベルを上げることはもちろんですけど、ベテラン選手の死に場所も作っていきたいですね」と大会を総括した。
次回は11.1後楽園大会。ここでは日菜太や、小笠原瑛作、重森陽太らの参戦が決定している。彼らはまだ若手の壁にならなければならない存在。若手の壱・センチャイジムの参戦が決まっており、彼らがこの日の試合を見て燃えないわけがない。
新生KNOCK OUTのスタイルが確立されつつあることを感じた大会だった。
(どら増田 / 写真・垪和さえ)