メジャーデビュー戦でいきなり初勝利をあげ、2試合目も打たれながらバックの援護射撃で2勝をあげたが、その後は足踏み状態、打球が胸に直撃するオマケまであったオリオールズ・上原。3年目のレッドソックス・松坂は予期せぬ事態に陥っている。WBC日本代表連覇の原動力として、2大会連続のMVPに輝いたツケが、まさかの右肩疲労となって回ってきて、故障者リスト入り。最悪のスタートになっている。復帰は5月中旬に予定されているが、どういう再スタートになるのか。それにしても、長嶋氏が絡んだ松坂VS上原の野球人生は因縁めいている。
横浜高校時代に甲子園で春夏連覇。しかも、決勝戦の京都成章高校戦でノーヒット・ノーランを達成した怪物投手・松坂は西武に入団してからも、次々と快挙を成し遂げている。高卒ルーキーのオープン戦2ケタ奪三振は史上初。高卒ルーキーのオールスター5奪三振は最多記録。鈴木啓示(近鉄)と並ぶ、高卒ルーキー最多タイの1試合15奪三振。毎回奪三振は尾崎行雄(東映)以来2人目etc。16勝して新人王と高卒ルーキー史上初のベストナインに選ばれ、オフの契約更改では438%アップの7000万円でサイン。ルーキーとしてはアップ率、アップ額共に史上最高を記録している。怪物の名に恥じないルーキーイヤーだった。
東海大仰星高校から1年浪人して大体大へ入学した上原は、甲子園の華々しいスーパースター・松坂との対照で雑草魂エースと呼ばれた。が、成績の方は松坂を上回り、19年ぶりのルーキー20勝で最多勝、防御率1位、奪三振王、新人王、沢村賞、ベストナインとタイトル、賞を総なめにしている。
それでも、スーパースター候補生・松坂に対しては、必要以上に意識過剰になっていた。「いいね、オープン戦で松坂と上原対決か。ファンが大喜びするし、マスコミも大歓迎だろう。球界が盛り上がる」と巨人・長嶋監督が飛びついた黄金ルーキー対決に対し、上原は拒否の姿勢を貫いた。雑草魂と呼ばれた男の意地なのか。
「オレに松坂の話題をあまり振るなよ。上原が気にするんだよ」。長嶋監督が親しい記者に対し、こう漏らしたこともあったという。これにはワケがある。長嶋監督は「ハッキリ言って松坂ファンです」と公言して、土日のデーゲームに松坂が登板すると必ずテレビ観戦。「松坂はすごい」と絶賛を繰り返していたのだ。現在と違って、巨人人気が高い時代で、巨人戦は週末でもナイターだったから、松坂を見られたのだ。
長嶋監督の松坂への熱愛ぶりは、半端ではなかった。実は、上原を逆指名で入団させることになっていたのを、松坂指名にひっくり返そうとしたこともあったのだ。「今の巨人には名実共にスーパースターになれる松坂がやはり必要だ」と。大逆転できなかったのは、すでに上原に対し、巨額の投資が行われていたからだ。