デビュー時は、下品で売れない舞台役者。しかし、そのおよそ20年後には、NHK放送文化研究所による「好感度タレント」の女性部門で、堂々トップ。その首位を、3年も守った。やがて、『笑っていいとも!』(フジテレビ系列)のレギュラーに抜てきされ、以降、女性としては最長となる17年半も出演しつづけた。
久本雅美はおそらく、日本を代表する“おもろいオバハン”だ。
大阪から上京した10代のころ、劇団東京ヴォードヴィルショーに入団。退団後の84年、柴田理恵らとWAHAHA本舗を設立した。以来、放送禁止、ド下ネタ、猥談もいとわず連発させることで、役者としての寿命を伸ばしていった。
ピン芸人だったころの竹中直人と共同で制作したビデオ「放送禁止」は、今なお語り継がれる“迷作”だ。放送禁止用語だけを羅列させた、しりとり。地方によって言い方が違う女性器を、拡声器で絶叫。ほかにも、死体の洗い方をレクチャーしたり、タブーネタもふんだん。当然のことながら、ビデオは発売後、回収騒ぎになったが、エロもグロも作品化する竹中、久本の原点が、あそこには詰まっていた。
このエロこそが、久本の、WAHAHAのキーである。
劇団員と旅回りをしたときは、メンバーや在阪タレントらで、ド派手に酒盛り。浴衣や服の上から、乳首の位置を当てる「乳首当てクイズ」なる、酒の肴となるゲームを編み出した。
嫌がる男性を尻目に、男風呂に乱入するのは日常的だ。その昔は、ラジオで、大事なCMスポンサーの「フェリシモ」を「フェラチオ」と読み、スポンサーが降板する事件も起こしている。そのあまりの傍若無人さに、あまりの下劣さに、ゲストが怒って帰ったこともあった。
久本にとって、エロは性別を超えた友情の証。傍若無人さは、関西人独特の距離感の詰め方。土足で相手の懐に飛び込むのは、コミュニケーションのひとつなのだ。
2歳のサバ読みも、今では笑い話。事件も醜態も、過去も下劣もすべてをネタにする。自家発電できる才能、燃料タンクは、いつもフル。それが久本という女なのだ。(伊藤由華)