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男と女の官能事件簿(2005年) 不倫相手の妻殺害を依頼で意外な事実(1)

 「この女を殺してもらいたいのですが」
 都内に住む木下智美(32)が依頼したのは、インターネットの「復讐請負サイト」だった。

 智美はかねてから、同じ職場の同僚で、妻子のいる山田悟史(32)と、いわゆる不倫関係にあった。職場の飲み会で知り合った2人は、何度か会ううちに不倫関係になっていった。
 最初の1年半ほどは、それなりに楽しい大人の付き合いが続いていたという。しかし、山田の妻が妊娠したと知るや、智美は嫉妬の炎をじわじわと燃やすようになっていった。
 「私よりも奥さんが大切だなんて、裏切られた。許せない。奥さんさえいなくなれば…」
 そんな思いを抱いていたある日、智美の目に留まったのがその「復讐サイト」だった。

 智美は、サイトに明記された電話番号に連絡した。そして、その「復讐請負人」と会う約束をしてしまった。
 「何でもやりますよ。お任せください」
 約束通りに現われた田中と名乗る男に、智美は依頼内容を確認した。すると田中は、山田の妻を殺す手口まで説明した。
 「バイクで2人乗りして、ターゲットを追い越す際に毒物を噴射します。一瞬で片がつきますよ」
 田中の話をすっかり信用した智美は、言われるままに10万円の現金を渡した。名目は「調査費用」だった。
 「これであの女もこの世からいなくなる」
 智美はそう思いながら、依頼した計画が実行されるのを待っていた。

 ところが、いつまで経っても山田の妻が死んだという話は聞こえてこない。そこで再び田中に連絡した。
 「もっと綿密に戦略を練っているところです」
 現われた田中は、そう言いながらさらに「調査費」を要求した。
 その後も田中は、毒物の調達費や、器具の購入費などと称して、智美に「経費」を要求。言われるままに現金を手渡したり、指定された口座に振り込んだりしていた。そして、いつの間にか田中に払った金額は、1000万円を超えていた。
 その金額の大きさに、智美も「ひょっとして、だまされているのかも」と気づいた。最初に田中に会ってから、すでに半年近くが経っていた。
 智美はすぐさま、近くの警察署に相談した。
 ところが、これによって「殺人を依頼した」ということが発覚。智美は暴力行為等処罰法違反の容疑で逮捕される。
 智美は山田の妻が死んでいないので、自分につみはないと思っていたようだが、それはまったくの誤算だった。(つづく)

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