古代への関心とロマンは、人々の間で根強い。そこで今回は、東京都内の杉並区を蛇行しながら横断する善福寺川周辺の遺跡を紹介したい。
【川南(かわみなみ)遺跡】
川南遺跡は、土器がまだ使われていなかった約1万2千年前(旧石器時代)の遺跡。物を切るための「ナイフ型石器」、木を削るための「掻器(そうき)」、石器をつくるために石をはがした跡である「石核(せきかく)」などが発掘されている。何かを焼いて食べた炉跡と推測される数十個の集石は、バーベキューの跡だ。
【方南峰(ほうなんみね)遺跡】
方南峰遺跡は、善福寺川が神田川と合流する直前の台地上に位置する。旧石器時代から古墳時代にかけての複合遺跡。善福寺川沿いの和田堀公園で展示されている住居は、方南峰遺跡で発掘された古墳時代後期(6世紀頃)の住居跡から推定復元されたもの。その復元住居と並んで、松ノ木遺跡から発掘された竪穴住居跡が保存、展示されている。
【寺社に残る古代】
善福寺川周辺にある神社仏閣の境内でも、多くの遺物が発掘されている。尾崎熊野神社では縄文時代早期の土器のかけら、和泉熊野神社では縄文時代の石棒、大宮八幡宮の旧境内地では弥生時代の首長の墓と推定される方形周溝墓などが出土している。善福寺川の豊富な水源のもと、周辺の一帯で、古くから狩猟採集生活が営まれていたことが報告されている。
善福寺川沿いの道は春には桜の名所として知られ、現在でも、緑豊かな憩いと生活の場を人々に提供している。付近を訪れることがある人は、古代へのロマンが眠る善福寺川沿いの道を歩いてみてはいかがだろうか。(竹内みちまろ)