波平は「プロ並み囲碁」のほかにも、驚きのプロフィールの持ち主である。
まず驚くべきは学歴であろう。波平といえば、山川商事の経理部に勤務するしがないサラリーマンといった印象がある。だが、出身大学は京都大学であるというから驚きだ。原作の設定では、波平は明治28年生まれなので、戦前の京都帝国大学出身となる。当時は今よりも大学生の数はぐっと少なく、帝国大学入学者はエリート中のエリートであった。
だが、波平の人生は日本が戦時国家となって行く過程と連動している。そのため彼の人生には戦争の影も存在する。『サザエさん』を観ていて、サザエとカツオ、ワカメの間の年齢差が気になった人は多いだろう。24歳のサザエに対して、カツオは11歳、ワカメは9歳と最長13歳の年齢差があるのだ。これはアニメ版の数字であり、原作ではサザエは27歳なのでカツオとは16歳の年齢差がある。子供の頃、サザエの子供が、カツオ、ワカメ、タラオの三きょうだいと勘違いしていた人も多いだろう。
この年齢差は、波平が兵役へ行き戻ってきたために、開いてしまったのではないかといわれる。さらに、サザエとカツオの間には、戦争で亡くなってしまった長男がいるといった説もある。もちろんこれらの話は、原作にも登場しないので都市伝説の類ではある。ただ、『サザエさん』にはこうしたトピックが多く、過去には東京サザエさん学会による『磯野家の謎』(飛鳥新社など)といった謎解き本も出版されているだけに、奥が深い世界といえるだろう。