7月14日、石破氏が『政策至上主義』(新潮新書)を出版した。秋の総裁選に向けた“政策集”の意味合いが強く、事実上の出馬宣言とも言える内容だ。総裁選はこれまで、安倍首相優勢との見方が強かったが、ここへ来て永田町界隈では、石破氏の逆転の芽が出始めているとの声が高まりつつある。
安倍首相は自民党衆参議員405人のうち、自派の細田派94人を筆頭に、麻生(副総理兼財務相)派、二階(幹事長)派、菅官房長官がまとめる無所属議員も加わり、過半数超えの230票前後を固めたと言われる。これに対し他候補は、岸田文雄政調会長に不出馬の可能性が高まったと見られ、野田聖子総務相も推薦人20人を集められるかどうかも微妙。小泉進次郎筆頭副幹事長においては今回の出馬は見送る可能性大だ。
「こうなると、現時点で事実上は首相と石破氏の一騎打ちになるが、石破氏は自派の20人からなかなか伸びてない。しかも首相は地方票獲得にも力を入れ、目標の60票を超えたとされる」(政治部記者)
各マスコミによる「次期総裁に誰がいいか」の世論調査でも、石破氏は安倍首相に大差をつけられているのだが…。
「それでも、石破氏攻勢の声が強まっているのは事実。自民党支持層の中でも、森友・加計問題を巡って首相にノーを突きつける向きは健在で、首相支持が多いのは、経済面が持ちこたえ、他に致命的な欠点が見られなかったからです。ところが、200人以上の犠牲者が出た西日本豪雨の真っ最中、首相を筆頭に議員宿舎で行われた『赤坂自民亭』でのドンちゃん騒ぎが大炎上し、地方では批判が爆発。加えて、米中貿易摩擦が暗い影を落とし始めていることが、一気に状況を変えつつあるのです」(自民党議員)
そうしたことが、もともと自民党内部にくすぶっていた来年の統一地方選や参院選への不安に火をつけ、「安倍では勝てない」という空気が蔓延しているのだという。
「そんな中、石破氏は逆転への秘策を着実に練り進めている。一つは、今回の出馬を見送るとの見方がある進次郎氏の支援。二つ目は、竹下派と岸田派の支援。石破氏は竹下派の影のオーナーである青木幹雄氏、岸田派名誉会長の古賀誠氏との接触を重ね、いよいよ石破支援に傾かせたとの情報も流れている」(同)
石破氏が想定する数字を得られるかどうかは、無派閥議員に影響力を持つ小泉進次郎氏から支持を得ることができるかどうかがカギをなっている。ちなみに小泉氏は、24年の総裁選では石破氏に投票している。
うだる暑さの中、両陣営の綱の引っ張り合いが始まった。