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2011年センバツ大会特集(3) 東北野球の強さと逞しさ「小さなことをコツコツと…」

 連日、テレビ各局が被災地の状況を伝えている。大会初日を迎えるまで気になったのは、福島第1原発関連のニュースである。日本高野連は『第83回選抜高校野球大会(以下センバツ)』を「予定通りの開催」を発表したが、実は「福島第1原発の状況が悪化すれば…」とも付け加えていた。今後中止になる可能性がゼロになっていなかったのだ。被災地の皆様には心からお悔やみとお見舞いを申し上げるとともに、代表校・32校の高校球児のためにも、一刻も早い事態の好転を願って止まない…。

 地震被害の大きい東北地方からは、東北(宮城)、光星学院(青森)、大館鳳鳴(秋田/21世紀枠)の3校が出場する。東北地方は全国10地区のうち、大旗を手にしていない唯一のエリアでもある。第71回大会(夏の甲子園)で仙台育英の大越基投手が決勝戦のマウンドまで上り詰めたが、あと一歩及ばなかった。地域ハンディ」の言葉は、北海道、沖縄がかき消してくれた。「日本中が元気に飢えているときだからこそ、今大会は東北地方の学校に」とも思うが、大旗の「白河の関越え」が果たされるのはそう遠くないのではないだろうか。

 09年秋の東北大会・準々決勝を観戦したときだった。筆者は別件で青森入りし、そのついでで球場に足を伸ばしたのだが、「素晴しい光景」に巡り逢えた。
 秋田商と山形中央の一戦は「1対0」の大熱戦となった。ゲームセットの整列、挨拶と同時に拍手が送られたが、その数分後、もう1度、拍手が沸き起こった。サヨナラ負けを喫した山形中央ナインが、引き上げる前に自軍ベンチの掃除を開始した。まだ球場に残っていた観戦者はその姿に足を止め、拍手を送ったのである。
 高校野球の世界において、こうした清掃活動は当たり前のことなのかもしれない。しかし、東北地方の球児たちはその当たり前のことをきちんとこなしていた。また、それを正しく評価できる大人や支援者もいた。青森県で行われた秋田県の高校と、山形県の高校の試合で…。東北地方のこうした高校野球の光景を見せられると、「近い将来、きっと」と思わずにはいられなかった。

 最後に甲子園入りした東北高校は、近隣の館中学校前で出発の挨拶を行った(19日)。各メディアで報道された通り、同校ナインが震災後、給水活動を手伝っていたところでもある。同校の寮生(野球部員)は別の中学校に一時避難していた。それでも、早朝から地域ボランティアに参加してきたという。
 昨秋の神宮大会のスタンドでしか観たことがないが、主将で4番でもあるエース・上村健人投手には「打たれ強い」という印象を持った。連打を食らっても、決して集中力を切らさない逞しさがある。
 大館鳳鳴も地域の積雪などボランティア活動を続けてきた。

 光星学院は公式戦12試合でチーム打率4割1分8厘を誇る。3校に共通するデータがある。どの学校も失策が少ないのだ。光星学院の12試合で「5」は突出しているが、東北は公式戦17試合で「17」。つまり、試合に1つの計算だ。大館鳳鳴は公式戦10試合で「8」。光星の強打者・田村龍弘君(3年)、東北のエース・上村君(3年)、大館鳳鳴の好左腕・斉藤浩平君(3年)など注目選手も多いが、東北勢の強さは「守備力=堅実なプレー」にある。コツコツと、当たり前のことをきちとこなしていく−−。そんな野球を見せてくれそうだ。開会式は入場行進を簡素化した。そこで演奏される予定だった曲は、3人組ユニット・いきものがかりの「ありがとう」。代表校・32校の球児たちの勇気に「ありがとう」を伝えたい。(スポーツライター・美山和也)

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