この流れを受け、去就がハッキリしない主力投手が現れた。埼玉西武・岸孝之(31)とDeNA・山口俊(29)だ。両投手とも在籍チームから残留の具体的な金額提示を受けたとされるが、結論を保留(10月18日時点)。当然、この流れは各球団のドラフト戦略にも影響しつつある。
「両球団とも上位指名選手を再検討することになります。退団を念頭に入れ、即戦力か、それに近い力を持った投手を獲得しなければ、戦力ダウンした状態で来季のペナントレースに臨むことになる」(ベテラン記者)
西武、DeNAともに今秋の目玉・田中正義(22=創価大/右投右打)に二重丸を付けていたという。しかし、西武の地元の埼玉県には高校球界を代表する左腕、高橋昂也(18=花咲徳栄/左投左打)が出現。DeNAも、お膝元の横浜高校に“エースの貫録を秘めた”藤平尚真(18=右投右打)がいて、ともに無視できない状況に立たされていた。
一時期、両球団とも、田中を始めとする即戦力系の大学生投手を諦め、「将来性」で地元の超高校級投手を獲るとの情報も交錯していた。「地元優先」の声も聞かれた昨今、岸と山口の去就問題が重なったのだ。
去る10月9日、DeNAの高田繁GMが報道陣に囲まれた。質問は国内FA権を取得した山口俊の去就についてで、同GMはすでに条件提示した旨を明かし、「具体的には言えないが」と濁しつつも、仮に山口がFA宣言したとしても、残留交渉を続けていくと打ち明けた。「宣言残留を認める」というわけだ。
「他球団の話を聞いたあとでこちらが、提示額を上積みするようなことはしない」
高田GMの言葉に対し、山口は「まだ考え中」と言わんばかりに沈黙を守ったままだ。
「本当に上積みしないのなら、山口の流出は可能性が高い。カネよりも野球に取り組む環境の話になると思う。山口はDeNAのエースではあるが、終盤戦、CSは故障で投げていません。『山口がいたら』というファンの期待感をプラスに捉えるか、重荷と受け取るか…」(前出・ベテラン記者)
この山口の去就問題と前後して“奇妙な情報”も聞かれるようになった。DeNAが田中でも藤平でもなく、柳裕也(22=明治大/右投右打)で1位入札するのではないか、と。柳は「150キロを投げる右腕」と紹介されているが、変化球を織り交ぜ、常に6、7割の力で投げる技巧派。セットポジション、フィールディングもピカイチで、好不調に関係なく、大崩れしない総合力の投手だ。この柳を獲得できたならば、先発ローテーションの一角を託せる。打線の援護にも恵まれれば、2ケタ勝利も挙げられるだろう。
「柳は横浜高校の出身ですよ」(関係者)
柳の名前が全国区になったのは、日米大学野球選手権で好投してから。明治大学に進んでからレベルアップしたとのイメージも強いが、DeNAは「地元横浜の高校出身」と位置づけたのか? 藤平に決まりつつあると聞いていた。柳の名前が再浮上したということは、『エース山口の退団』を想定してのことだろうか。