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2016年ドラフト情報「即戦力か、将来性?」 スカウトの眼力が試される難解の年(北海道日本ハム編)

 「分からない」。北海道日本ハムファイターズの関係者にドラフト候補の話を振ると、必ず返ってくるのがこのセリフだ。どの球団もそうだが、数人に絞り込んだ1位候補のなかから「最後の一人」を選択する。トップシークレットである。また、あえて指名候補の名前を明かしてきたときは「マスコミを利用して、入札での重複を嫌う球団を牽制したいのかな?」と勘繰ってしまう。「分からない、知らない」と答えるのが、当然の世界なのだ。
 しかし、日本ハム関係者の「分からない」の言葉は、ちょっと違う意味も含まれていた。各地区担当スカウトが集めてきた情報をもとに、数人のトップ役員が最終決断を下す。ここまでは他球団と同じだが、日本ハムはその最終選択を各スカウトにも知らせない年もあるという。だから、本当に1位指名が分からないスカウトもいる。とはいえ、これまでの日本ハムであれば、一貫して、その年のナンバー1を獲りに行った。その方針通りなら、今年は「ナンバー1=田中正義(22=創価大/右投右打)」だが、別のルートから“異常事態”も聞こえてきた。
 「今年は想定外のこともあったので…」
 想定外とは、左投手の戦力ダウンだ。とくに先発タイプの左投手が勝ち星を伸ばせず、緊急に補う必要があると判断された。よって、田中指名を見送る可能性も出てきたのだ。

 日本ハムを代表する左投手といえば、吉川光夫。防御率4点台で7勝に終わった。新人の加藤貴之も7勝。救援陣には宮西、石井がいるが、この4人以外で10試合以上に登板した左投手はいない。ナンバー1の田中がほしい。しかし、将来性豊かな左投手を獲るとすれば、目が行くのは寺島成輝(18=履正社/左投左打)、高橋昂也(18=花咲徳栄/左投左打)であり、彼らは「田中競合」を避け、一本釣りもありうる他球団の1位候補だ。
 将来のエース候補として、田中、寺島、高橋の三択だろうか。3人とも競合は覚悟しなければならない。『外れ1位候補』は新潟医療福祉大・笠原祥太郎(21=左投左打)、広島新庄高・堀瑞輝(18=左投左打)、地元北海道の古谷優人(17=左投左打)、社会人ならば、大阪ガス・土肥星也(21=左投左打)が考えられる。

 土肥はオーバーハンドで、投球フォームも綺麗である。「速さ」ではなく、キレで勝負するタイプで、往年の川口和久氏(広島−巨人)を彷彿させる。但し、「急成長した投手」とのことで、実戦で好投したデータが少ないので判断が分かれる。開幕ローテーション入りはできないかもしれない。
 ヤマハ・池田駿(24=左投左打)を評価するスカウトも多かった。スピード感のあるボールを投げており、スライダーを決め球にしていた。時折、緩いカーブ(チェンジアップ?)も織り交ぜてくるので、緩急でも勝負できる。しかし、某スカウトは「リリーフタイプじゃないか?」と話していた。ストレートの速い左のリリーバーなら、宮西がいる。左の救援投手は何人でもほしいところだが、日本ハムは戦力の重複を嫌う。他球団のスカウトの声になるが、「寺島は即戦力と見ていい」とのこと。寺島、高橋ともに将来性では甲乙付けがたい。即戦力。ナンバー1の田中を“放棄”してでも左の先発候補を指名するとしたら、寺島ではないだろうか。

 今季143試合全てに出場した二塁手・田中賢介も35歳になる。二遊間の守れる次世代のスラッガーならば、白鴎大・大山悠輔(21=右投右打)が浮かぶ。身体能力の高い早稲田大・石井一成(22=右投左打)は「打てる遊撃手」だ。ショートには中島卓也がいるが、今季、主に三塁を守ったのはレアード。3年先を考えれば指名しておきたい逸材だ。また、陽岱鋼がFA権を行使するとしたら、強肩堅守の打てる外野手も獲っておかなければならない。専修大・森山恵佑(22=左投左打)は長打力が魅力と紹介されているが、元投手なので肩も強い。広い札幌ドームが本拠地なので、日本ハムの外野手は肩の強さが絶対条件となる。立教大・佐藤拓也(22=右投左打)は3拍子揃った逸材。173センチと小柄だが、長打力もある。高い放物線を描くのではなく、速い打球で外野手の間を抜いていた。ゴロヒットにしても、打球の速さは際立っていた。
 初志貫徹で田中の入札に参加するか、それとも、左の先発投手を指名するか…。好投手は他球団もマークしている。投手補強では苦労させられそうだが、野手のほうは充実した補強ができそうである。

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